前回、アパレルショップ販売代行ビジネスに関わるデメリットなどお伝えしました。
今回、 実際に働く販売スタッフについてのデメリットです。全ての販売スタッフに該当するわけではなく、体験上その可能性は極めて高いということです。それを踏まえた上での対応策を講ずることになります。
Table of Contents
販売代行の販売スタッフの課題
- )帰属意識
- )接客スキル育成
- )従業員満足度
- )スタッフの定着
1.販売スタッフの課題「帰属意識」
販売スタッフが “(ショップの)ブランドの看板を背負って仕事をしている” のか、という点です。
※ブランドとは、高級ブランド店ではなく、商標・店名などのこと。
※「帰属意識」とは・・・
特定の集団・団体に属しているという意識
アパレルメーカーに直接雇用されてショップで働く場合と、販売代行業者という別の会社・個人事業者に雇われて働く場合とでは、心理的な部分も含めて意識の差が生じてしまいます。
帰属意識の高低は、業務を行なう上での言動に反映されてきます。
それはメーカーに直接雇用された販売スタッフでさえも違いがあることと同様です。例えば、正社員店員とアルバイト店員では “ショップスタッフとしての責任の背負い方に違い” がありますから、外部の販売スタッフとなれば尚更です。勤務を始めた時は意識も高めですが、次第に薄れていくのも事実です。
帰属意識が低くなる理由はいくつかありますが、ブランドのことを理解していないところから仕事をスタートしている点もネックとなっています。つまり、「そのショップ(ブランド)でなぜ働くのか?」という根本的な働く理由・目的のズレから意識低下へ繋がる要因でもあります。
ショップに来店するお客様は、メーカーの店員と思い、サービスを求めます。販売代行業者の従業員とは頭の片隅にもないでしょう。常連客ともなれば、『この店の店員に相応しくない!』と評価する方もいるはずです。
店員の接客が最低限のレベルであり、お客様が想定していなかった対応をされてしまうと、接客に関するクレームになることは必至です。
責任もって働いている販売代行業者の販売スタッフもいますが、帰属意識は強制するものではないため、意識定着が課題となります。
ブランドが好きで、そのブランドを多く人に知ってもらいたい、広めたい、という信念のあるスタッフであれば、正社員や外注社員などは関係なく役目を果たしてくれるでしょう。
しかし、ブランドに拘らない場合は、ブランドへの帰属意識ではなく、販売プロフェッショナル集団という販売代行業者への帰属意識がポイントになってきます。
2.販売スタッフの課題「接客スキル育成」
接客スキル育成の環境は、メーカーと販売代行業者で多少なりとも違います。
販売代行業者に教育環境が整っていない場合、接客スキルの向上、帰属意識への影響、モチベーションの高揚など経営者としての責任を避け、スタッフへ責任転嫁、あるいはパワハラなどの威圧的対応をしかねません。
これはメーカーや商社にも言えることで、販売スタッフの育成環境が蔑ろになっている現実が多々あります。
一般の消費者からの評価として近年、販売スタッフのスキル低下が問題視されているのには、理由があります。
反対に教育に熱心なメーカーもあります。販売代行業者のスタッフでさえも、全店の店長会議に参加させたり、教育プログラムに参加させたりします。不定期にメーカーの教育担当が巡店(複数の店頭を巡回)して、接客態度や5Sなどをチェックし、必要な改善を求めることも行っています。メーカーがブランドイメージを維持するための最善を尽くしている傾向です。
メーカー側がそこまでのフォロー体制がない場合もあるため、販売代行業者側に全てを委任する状況であるなら、業者が接客スキルも含めて育成する体制を整える必要があります。
ところが、接客スキルなど人材育成レベルの低い業者も実際にあり、ひどい店舗もたまに見かけます。
例えば、レジカウンター内から動こうとせず、スマホをいじっている販売スタッフがいたり、お客がいないからといってスタッフ同士で私語を続け、客の入店に気づかず挨拶もしなかったり、など。
さらに基本的な動作で言うと、お店の入り口にお尻を向けている、掃除をせずホコリがほったらかし、挨拶しない、など。
そして、このような店員に注意すると、不機嫌になり、接客を拒否することもあります。
全国的な販売スタッフ不足が、接客レベルを低下させていることも否めません。
ショップを運営する側(メーカーや販売代行業者)としては、売上うんぬん以前に、ショップを定時間にOPENさせ日々運営しなければなりません。接客販売をしたいわけではなく、給料のための仕事として作業をする人を採用する傾向があるのも事実です。
アパレルメーカー側は、ブランドイメージを損ないたくない場合、直営(直接運営)にすることが主流です。特にラグジュアリー系はその傾向が強いです。
以前、販売代行業者に数店舗も任せていた欧州ラグジュアリー系ブランドのメーカーがありました。ところが、ショップの売上は伸びず、結局数年で直営に切り替えました。販売代行業者は倒産したと耳にしました。
販売代行業者の選択を間違えたのでしょう。予想として、メーカー担当者(窓口)と販売代行業者の経営者とが友人で、店舗を任せたものの、販売スキル、ノウハウ、スタッフ教育などが上手くいってなかったと考えられます。
3.販売スタッフの課題「従業員満足度」
利益を重んじる(利己主義的な社長の)販売代行業者は、「従業員満足度(Employee Satisfaction (ES))」が相当低いです。
例えば、給料は最低賃金並に安い、社会保険に加入させない、有給休暇が取りづらい、シフト作成時に希望休日を言いづらい、社長や店長が口うるさい、社長は贅沢な暮らし、わがまま、等々。
このような環境で販売スタッフの満足度が上がるはずもありません。
職場環境の悪い業者は、店舗を1年間ほど観察していれば分かります。販売スタッフの入れ替わり(離職率)が激しいですから。
しかし、販売代行業者としての立場上、販売スタッフのスキルが向上しなければ売上も伸びません。よって、利益主義の販売代行業者であっても高スキルのスタッフには態度が柔和で甘く、好条件です。
例えば、(売上に貢献しているので悪くはないけど)他のスタッフより給与がよかったり、食事に誘ったり、他のスタッフから高スキルのスタッフに対する苦情があっても改善しようとはせず、高スキルのスタッフを擁護したり、など。つまり、肩入れ(ひいき)が明らか。そこから、販売スタッフ同士の人間関係が悪化していきます。
かつて、店長ともう一人のスタッフ計2人で運営している(販売代行の)ショップを知っています。販売スタッフがほどんと辞めてしまいスタッフ不足で、公休なしのシフトでした。確かに労働基準法違反ではありますが、パワハラ的な店長たちの自業自得の結果と感じた状態でした。
女性が多い職場としてのアパレル業界。嫉妬心が生じると、悪口陰口、いじめ、差別言動が続きます。
真面目で高スキルのスタッフも職場が楽しくなければ、好きなブランドショップでも辞めたい気持ちが芽生えます。
悪化した職場雰囲気を改善しようと個人面談を繰り返したり、時には秩序を乱すスタッフを解雇したりする経営者もいます。人間心理や人間関係性なども含めて、管理できる販売代行業者の経営者なら良いのですが、できていない業者があるのも事実です。
4.販売スタッフの課題「スタッフの定着」
販売スキルの高いスタッフを確保するのも、育て上げるのも大変なことです。(多くの会社が悩む課題でもあります。)
販売代行業者として、いかに高スキルの販売スタッフを抱え込むために「従業員満足度」を向上させることは継続な課題なのですが、そこには別の難敵があることも知っておく必要があります。
通常のスタッフの退職の理由は様々ですが、家庭の事情や病気、夢への挑戦などなら納得して受け入れられます。しかし、他の店舗に転職するなどの理由には、雇用している立場として改善すべき点があると認識すべきです。
もし、高スキルのスタッフを雇用している場合、他の店舗からも一目置かれるでしょう。つまり、メーカーや他ショップにターゲットにされるということです。(反対にターゲットにすることもありますので、知っておくことは有利です。)
ヘッドハント
「ヘッドハント」は、棘のある言い方をすれば “人材の引き抜き” です。
ヘッドハントを行なう専門会社(人材紹介会社)もありますが、メーカー担当者や同業の経営者なども当たり前のように行なっている現実があります。高スキルのスタッフは、ターゲットにされやすいです。
百貨店内やファッションビルなどでは暗黙ルールとして、引き抜きを禁止している場合もありますが、各店舗のスタッフ同士が仲良くなる状況もあるため、店長自らが他店舗のスタッフをヘッドハントすることもあります。
特に販売代行業者の販売スタッフは、メーカー直接雇用のスタッフとして誘われると気持ちがなびきます。対外的にも職歴としても格好がつきます。(正社員とは限らず、契約社員制が多いですが。)
高評価のスタッフの承認欲求が、「認められた!」という気分になることで、好んで転職すると考えて良さそうです。
ただし、アパレルメーカーも、会社組織としては一長一短。ブランドは知名度が高くても、組織に入れば別次元の話しです。
残業手当は出ない(サービス残業の慣習あり)、責任だけがのしかかる(責任が重い)、などの声も聞かれました。(※ここでの責任というのは、大抵売上目標や棚卸し差異、盗難対策などです。)
目標は苦痛になれば、“ノルマ” に変わります。ポジティブの時は “目標” 思考で、ネガティブの時は ”ノルマ” 思考です。ノルマは仕事の質と能率性を下げてしまうのです。
結局、会社組織と従業員の関係は、「居心地」「人間関係」も重要ということを知った上で、従業員満足度の向上を考えていかなければなりません。
こういった事情もあるため、販売代行業者はスキルの高い販売スタッフを雇用し続けるのも大変なのです。
販売代行ビジネスをやってみたい方
もし、『販売代行ビジネスをやってみたい!』という方は、そのことを理解しながら行なったほうがいいでしょう。
これは、法人にする必要がないので、販売のノウハウ、運営のノウハウ、教育のノウハウなどがあるのであれば、ビジネスとして参入可能です。
メーカー(ブランド力、商品力など含め)を見極め、契約条件をしっかりおさえておけば、場合によっては、報酬は何倍増も可能です。
タイミングもありますが、すでに新しい施設がオープンしているなら、2年目以降で考えるか、増床(テナントが増える)時のタイミングが無難でしょう。
販売代行の契約は、大抵1年更新(3ヶ月前解約通告)です。
また、『いつか自分でお店を出したい!』という方は、販売代行ビジネスからスタートすることも戦略の一つです。
テナント代、商品代は不要ですので、運営管理スキルを磨き、人脈・情報集めと思えば良いと思います。