「リスク・テーキング」は “意思決定” の一つです。
これを行なうために「リスク・マネジメント」を理解する必要があります。これを習得することは、自社・自己のためでもありますが、さらに、顧客(消費者)に対するビジネス・オファーにおいて重要である、と言えるでしょう。何故なら、「リスク・マネジメント」を理解することで、お客・他者・自身のリスク(特に、痛みや迷いなど)を適切かつ合理的に、解決することが可能だからです。
リスクは、
あなたが何を行なっているのか、知らないことが原因だ。
目次
「リスク」とは
多くの方は、「リスク」をマイナスのイメージで捉えてしまいます。
成功する人と成功しない人の差は、ここで(も)大きく開きます。
先ず、「リスク」は “危険” ではナイということです。
リスクは、利得性(便益性)と損失が混在しているもの。
「ハイリスク・ハイリターン」や「ローリスク・ローリターン」などに使われていますが、『リスクが高い!』という安易な(平均的な)バイアス(=思い込み)で、人は決断しない、あるいは行動しないということが数多くの場面であります。
大抵、理論的、科学的ではなく、ただの気持ち(感情論)と感じます。(リスクが何か?を把握していない時の方が多いとも言えます)
リスクの語源は、イタリア語の「リジカーレ」からという説。
「リジカーレ」とは『勇気を持って試みる』という意味で、チャンスに対して、勇気を持ってチャレンジするか、しないかということ。
言葉の意味は ”分かった” としても、行動できるかできないかは別の問題です。
行動できない場合、単純に「リスク」というものを誤解しているか、「リスク」を間違えているか、「リスク」の対処の仕方を知らない‥‥などの現状があるからかもしれません。
あなたが何を行なっているのか、知らないことが原因だ。
つまり、知っていれば良い方向に解決する、と捉えることができます。
リスクを知る理由
リスクを知ってもらう理由は2つ。
(1)リスクマネジメントするため
(2)人の痛みや不安を取り除く方法を知るため です。
人生において、リスクがゼロになることはありません。生きていること自体がリスクです。
行動しない、というリスクも存在してます。
どのようなリスクがあるのかを理解し、どのリスクを背負うか‥‥ということを考え、リスクをチャンスに変える者だけが “優位” に立ちます。
「圧倒的優位を手に入れた人たち」
リスクが大きければ大きいほど、そこから得られる利得が大きいということ。
昔も今も変わらないため、リスクを超えられる力を得ることができます。
失敗は、人生の免疫である。味わい尽くし、分析せよ。
リスクから逃げたいのは、他の人も同様です。
誰しも、リスクを背負いたくありませんし、回避したいと常に思っています。
同時に、「利得」を容易に得たい、と願っています。
だから‥‥「詐欺」に遭うのです。
「ローリスク・ハイリターン」を望んだからでしょう。
一般的には、人間の持つリスクに対する不安回避法、改善法などがあれば、興味を抱くことは多々あります。
ダイエット活動や化粧行為だって、リスク回避の現れです。
健康食(アプリなど)や生命保険だって、リスク低減のための商品なのです。
そこに、ビジネスのネタが転がっていることになります。
人は、何に不安を抱き、何を恐れているのか・・・。
それが分かっていても・・・という方が身につけなければならないのが、
「リスク・マネジメント」です。
リスク・マネジメント
『リスク・マネジメントは難しい!』と考えてしまうと、避けようとします。
(別に、知っても危険はないのですが‥‥。)
「リスク・マネジメント」でやるべきことは、
(1)「リスク」の種類を理解する
(2)「リスクテーキング」を行なう
です。
リスク・マネジメント概略
「リスク・マネジメント」の概略を、次にまとめてみました。
リスク・マネジメントの構成として、「リスク概念」と「リスク処理」に分類できます。
リスクに対する一般的なイメージは、「ペリル(事故)」についてであり、それも思い込みであったりします。
本来、「ハザード」「リスク」「ペリル」「ロス」を理解した上で、リスクが高い、リスクが低いと判断できれば良いのでしょう。
そして、マネジメントは「リスク処理」まで行ないます。
予想される「リスク」「ロス」などを、いかに低減・回避するか‥‥ということになります。
それが、「情報活動」「企画活動」「選択活動」「実施、フィードバック」です。
リスクをゼロにすることはできませんが、減らすことは可能だということ。
これを実践の中で身に付け、取り組むことができれば、「優位に立つ」ことができるということになります。
「リスク」の種類
「リスク」は、大分類として次の3つです。
(1)静的リスク
純粋リスクとも言われます。
事件、事故、自然災害などの偶発的な事象です。
このリスクは、利得性は低く、損失性が高いものです。
想定範囲の損失対策は容易です。
例えば、
子ども独りで歩かない、暗闇を歩かない、催涙スプレーなどを所持する、護身術として合気道を習う、損害保険加入、災害非難対策の実施・・・等
(2)動的リスク
投機リスクとも言われます。
政治、社会、経済、経営など外的変動が予測できないものです。
このリスクは、損失性もありますが、利得性も十分にあるということです。
損失対策は難しいリスクにはなります。
(3)心理的リスク
人は皆対象となる、利得性も損失性も存在するリスクです。
行動によってつながる感情、精神、心身に対するリスクであるため、自己分析できる人は予想しやすいもの。つまり、対策は容易です。
例えば、
甘い物を食べると幸せな感覚になることで、つい食べ過ぎてしまう(=太る、血糖値が上がる、などの影響)。
心理的リスクは、ニーズ・ウォンツに深く関わっています。
例えば、
快楽を得たい感情より、苦痛を回避したい感情のほうが、消費行動を起こしやすい・・・というのも心理的リスクによるものです。
ダイレクトマーケティングや感情マーケティングというのは、これを対策したマーケティングであると言えるわけです。
ポイントになることは、「リスクは、常に変動・変化する」ということです。
リスクの大小は、リスクの大きさではなく、
リスクの性格で判断する。
4つのリスクとリスクテーキング
「リスク・テーキング」とは、リスクに対する意思決定のことです。
リスクを理解した上で選択し、それを背負って行動することと考えることができます。
(リスクを知らずに起こす行動を “不安全行動” と言います。)
身近な例でいうと、
- 交通事故というリスクを背負って、自動車の運転をする。
- 捕まるリスクを背負って、電話しながら車の運転を行なう。
- 食あたり、毒のリスクを背負って、生肉やふぐ料理などを食べる。
- 病気になるリスクを背負って、喫煙、飲酒をやめない。
- 解雇を覚悟の上で、社長・上司に進言する。
等々。
普段の生活の中で、人は「リスク・テーキング」を行なっています。
ただ、そこにあるリスクを理解せず、行動する、あるいは行動しない、ということも実際には存在することを理解する必要があります。
この「リスク・テーキング」をどのように考えていくのか?
参考になるのが、ピーター・ドラッカー氏の「4つのリスク」です。
「4つのリスク」
負うべきリスク |
本質に付随するリスクです。
予測も対策も可能なものです。
例:運送会社なら交通事故や商品破損など
宝飾店なら盗難や接客クレームなど 飲食店なら食中毒など 製造会社なら不良品や減産、資材価格高騰など |
負えるリスク |
失敗などで、多少の資金や労力を失うリスクです。
対策が可能です。
例:製造会社ならライン増設、新作投入など
化粧品会社なら新商品開発など 飲食店なら店舗改築、設備投入など |
負えないリスク | 失敗などで、膨大な損失があるリスクです。 また、成功しても、その成功を利用できないものも、このリスクです。 例:リソースに見合わない投資、事業拡大など |
負わないリスク | リスクを負わないことで生じるリスクのことです。 機会(チャンス)損失における取り戻せないリスクになります。 チャンスを逃して大損するということです。 行動しないリスクがここに該当します。 例:新規業界や新規事業などの参入の機会遅れなど |
この「負わないリスク」については、ドラッカー氏は次のように語っています。
勿論、何かを起こすにはリスクが伴う。しかしそれは合理的な行動である。何も変わらないという居心地のよい仮定に安住したり、ほぼ間違いなく起こることについての予測に従うよりも、リスクは小さい。
大抵の人・会社は、「負うべきリスク」までは考えます。
「負えるリスク」と「負えないリスク」は、その都度の分析がものをいいます。
そして、成功・成長・発展させたいのなら、「負わないリスク」を減らし、マネジメントを行ないながら、「負うべきリスク」「負えるリスク」に近づけることがポイントになります。
この4つのリスクを選択することが、「リスク・テーキング」ということです。
事業の経営も人生も同様だと思います。
「リスク・テーキング」をいかに行なっていくのか・・・それは、リスクを理解し、その対処を的確・明確にしていく知識や能力を身に付けることです。
それが、「リスク・マネジメント」ということになります。
サラリー生活のリスク