セルフコーチングとは? 考え方と方法

セルフコーチングの概念

“誰でも” “簡単に”『セルフコーチングができる』と語る方が多いのですが、私見としては誤解を招くと感じています。
『セルフコーチング』の有効性はあるものの、“簡単” ではありません。

言えることは、『セルフコーチング』を身につけることで、今起きている自身の問題や未来の課題に対し、自らが立ち向かい、自ら解決の道筋を立てることができてきます。
 身につける前に、“正確に『コーチング』を理解” し、『セルフコーチング』実践の継続が必要です。『コーチング』スキルは高額な講習を受ける必要はなく、ネット上や書籍などで理解することはできますが、経験を積むためには独学よりも支援してくれる方がいると、続けられることができるでしょう。

『コーチング』は学ぶものではなく、身につけるものです。
 結果的に身につけた方のみが得られる感動と満足が、『セルフコーチング』の良さを伝えることができます。

セルフコーチングとは?

『セルフ(Self)』とは “自分自身” のことですが、セルフ・サービスやセルフ・チェックなどのように、他人が自分に行なってくれる事柄を “自分自身で” 行なうことで、事が済みます。

つまり、セルフ・コーチング(Self Coaching)』とは、“自分自身で” 自らを『コーチング(Coaching)』すること、です。

では、『コーチング』とは何でしょう?

コーチングとは何か?

コーチング』とは、

コーチ=馬車という語源から一般的に、“目的地へ送り届ける” こととされています。

コーチ,馬車
(画像出典:iStock

未来における目的・ビジョン・目標・ゴールなどを “目的地” と位置付け、達成する(=たどり着く)ためのサポートを行なう手段の一つです。
 目的・ビション・目標・ゴールなどは一人ひとりで違いますし、個人・チーム・会社などでも違いますから、その達成する方法も複数あります。
 類似した手段には、コンサルティング、ティーチング、アドバイスなどがありますが、手法が違います。場面や状況に応じて、それらを使い分けることもできます。

コンサルティング、ティーチング、アドバイスとの違い

コンサルティング対組織がメイン。
問題解決型(マイナスをゼロに)と課題解決型(ゼロからプラスに)がある。
現在の状況・問題について、活動実態や実績データなどのエビデンス(科学的証拠)を分析し、論理的に仮説を立て、問題提起・原因追求・解決方法を提案する。ほとんどの場合、相手の実務には携わらない。
一般的にコンサルタントと称される人の知識(ナレッジ)や経験(キャリア)に基づくため、その人物によって結果に差が生じる。
ティーチング対個人、対集団で行なう。
知識や技術、原理・原則などを教えること、伝えることを主とする。
すでに “答え” があることについて、“解き方” “答え” を言語化・可視化して教えることで、時間的に短縮できる効果がある。
ティーチャーは一般的に、学校の先生などを思い浮かべるが、ティーチングは幼少期から慣れ親しんでいるスタイルのため、スポーツ界に限らず会社組織内でも新人研修や後進育成などで常態化している。
上下関係で行なっている傾向が強い。
アドバイス対個人、対集団、対組織でできる。
相手の求めに応じて、主観的な助言、忠告、意見などを行なう。
経験のある人、専門知識のある人、著名人などからテーマや問題・課題解決についてヒントとなること、参考になること、事例、解釈などを伝えることになる。
アドバイザーとは一般的に、持っている情報を共有する程度に止まることが多く、それによって生じた結果に対する責任を負うことはない。専門家や顧問と称される方のアドバイス内容は、人によって違うこともあり、役に立つ情報、役に立たない情報が明確になってくる。
コーチング並行して複数人に対し行なうこともあるが、基本は対個人である。
知識や技術、解決策などを教える、伝える、与えるようなことは原則せず、“質問” や “フィードバック” という方法によって、相手(対象者)自らが考えて “気づき” を得ることを主とする。“答え” を与えず、対象者自らが “答え” を出すことに特化する。
対象者が望めば、ツール提供やアドバイスをすることもある。
コーチングを行なう人の人生経験や年齢、資格などはほとんど関係がなく、保有する “質問” の数も関係ない。相手に合わせて適切な “質問” ができるかが鍵となる。信頼関係をベースに、対象者の目的達成を協働して行なうことになる。

コーチング』と聞けば、スポーツアスリートへの技術指導する人(コーチ)が行なっていることを一般的に思い浮かべるかもしれませんが、おおよそ別物です。日本での多くのコーチ(指導者)はティーチングが主です。
 テニス界の大坂なおみ選手やマラソン界の大迫傑選手と契約していた海外のコーチは、『コーチング』を実行していました。

当サイトで言うところのコーチング業界では、コーチングする相手(対象者)のことを “クライアント” と称していることが多く、『コーチング』を行なう人のことを “コーチ” と呼んでいます。

“コーチ” は人物を指すのではなく役割と捉えています。
 日本の技術指導(ティーチング)を主とするコーチと呼ばれている方々とは、一線を画しており、最近ではティーチングを行なうスポーツ・コーチたちが『コーチング』技術を学び始めています。理由は、ティーチングでは実質的に教えられない “考える力” と “主体性” を養うことができるからです。

セルフコーチングとコーチングの違い

“セルフコーチング” と “コーチング” との大きな違いは、「『コーチング』という手法を誰が行うのか?」という点です。

  • “セルフコーチング” は、自身(クライアント)に対して自分自身が『コーチング』を行なうこと
  • “コーチング” は、クライアントに対して他者が『コーチング』を行なうこと
コーチングとセルフコーチングの違い
(イメージ図)

他者とは、プロフェッショナルの方(長期間の実務経験や優秀な実績のある方、団体の認定者など)、コーチング技術を修得した方(一定の講習を受講完了した者、もしくは独学して修得した者)、ネイティブ的な方(誰かに教わる事なく、生活の中で身につけた特性のある方)、などの方々です。

大坂なおみ選手や大迫選手を “クライアント” として契約したコーチたちは、プロフェッショナルの方と言えます。

参考

大迫傑「日本を出たから日本新」〜“誰のための「コーチング」なのか? 日米の大きな違い”〜

(記事出所:プレジデントオンラインより)

セルフ(自分自身)で行なうことと、他者が行なうことでの違いは、他にも影響してきます。
 例えば、

  • 金銭‥‥他者なら有料(契約上のコーチング・フィー)です。ただし、会社などの組織で選任されたコーチ(キャリアコンサルタントなど)であれば無償がほとんどです。
  • 時間‥‥他者なら、日時をセッティングする必要があり、またコーチングを受ける時間も制限があります。
  • 場所‥‥他者なら、面会する場所が必要になります。Web面談の場合は、ネット環境が欠かせません。
  • 人物‥‥他者なら、その方との相性、関係性、スキルや経験の深さなどで、結果に影響が反映されます。

上記のような違いはありますが、他者のコーチングを受けることでその役割と手法を理解し、実行することで『コーチング』ができるようになってきます。

コーチングの基本的な考え方

基本的な『コーチング』の考え方は、

  1. ゴール・目標を明確化し、
  2. 現状の把握と分析を行なうことで、
  3. ゴール・目標を達成するための課題・問題を明確にしてから、
  4. ゴール・目標達成までの行動プランを立案・実践していくこと

これらを、クライアント本人が主体的に遂行できるように、下支え(バックアップ)することです。

コーチングの考え方
(イメージ図)

下支え(バックアップ)する主要な方法としては、“効果的なコミュニケーション”(例えば、傾聴・有効な質問など)によって、クライアント本人が “気づき” と言われる答え出しができるよう導くこと、そして “フィードバック” と言われるコーチの主観的な事実情報をクライアントへ伝えること、などがあります。

コーチ本人の経験や知識などを教えたり、答えを与えたり、考えを押し付けたりすることはしません。主導権は常にクライアントです。

ただし、そもそも “気づき” とは、本人の経験や知識などの記憶情報から引き出すことであるため、知らない(未知の)ことについて “気づき” を得ることは不可能です。
 また、考えることを苦手とするクライアントもいるため、クライアントの承認のもと、コーチの所有するツールや情報を提供することは実際にあります。そのツールや情報を使うかどうかは、クライアントの自由意志が前提です。

コーチングで重要なのは関係性

『コーチング』の手法云々の前に重要なことは、クライアントとコーチが良い関係性を築いていることです。
 例えば、建築物でいうところの地盤です。地盤が緩かったり、傾いていたりすると、建屋の設計や資材が立派だとしても建築物が完成されない、あるいは完成した建築物が早々に倒壊するなどの危険性(リスク)を高めます。

不安や不信のある希薄な関係性では有効な “コーチング” はできず、クライアントの目的達成は程遠いものとなります。

クライアントがより良い状態で目的を達成するために、“信頼関係” と “提携関係(協働関係)” は “コーチング” するための基盤と言えます。
 つまり、上下関係、主従関係、先生と生徒の関係、売買関係などの意識では、コーチングは最大限に発揮されません。

“セルフコーチング” であっても同様と考えられます。自分自身への信頼がなくてはなりません。

自己否定的な人、自己卑下的な人、自信喪失的な人、ネガティブ思考の人などにとって “セルフコーチング” は効果が薄い場合もあり、逆効果になることさえもあります。例えば、マイナス行動の選択をしてしまうかもしれません。

このような方はセルフコーチングを行なう前に、別にカウセリングなどを受けたりして、自身の気持ちや考え方を調整しておく必要があります。

セルフコーチングとは何か?

セルフ・コーチング(Self Coaching)』は、“自分自身で” 自らを『コーチング』することです。
 つまり、自らをクライアントとして、“自分自身” がコーチとなり、コーチングの手法を用いて、目的達成のために継続的な実践を行なっていくわけです。

『セルフ・コーチング』のポイントは、主体性、自覚、客観性、継続、承認です。

主観的な自身(クライアント)と客観的な自分(コーチ)が、“セルフトーク(自己対話)” を繰り返しつつ、コーチングプロセスを実践していくことになります。

セルフトーク” は、普段の生活の中ですでに使われている人に備わったものです。
 トークの内容を “コーチング” で行なう質問(“問いかけ” とも呼ばれる)などにより、自問自答を反復します。主観的な自身の声に耳を傾ける(傾聴する)ことで “気づき” =自らの答えが得られます。これを業界用語で『オートクライン』と呼びます。

意味

『オートクライン』とは・・・

医学用語で「自己分泌」を意味するが、コーチング業界では、「自分が話したことば(内容)を自分で聞くことによって、自分が考えていたことに気づくこと(出所:Hello,Coaching!より)」とされている。

コーチングによるオートクライン
イメージ図

効果的な質問” を自身へ投げかけ、思考と行動の選択を自発的に行ない、課題の解決やインスピレーション的な答え(気づき)を導き出すことで、自らのゴール・目標を達成させることができる手法が、この “セルフ・コーチング” です

良い成果をもたらすためには、“効果的な質問” の質を向上させるための努力が必要になってきます。慣れるまでは右往左往すると思いますが、諦めずに継続することです。
 未来志向の問いかけを増やしていくことで、普段ではなかった “気づき” を得やすくなります。

“セルフ” のもう一つの意味

『セルフ(Self)』には別の意味があります。「自動」です。

他人(コーチ)によって行われる “コーチング” は、コーチと時間を共有したり、面談など接触したりすることが必要になってくるため、多少の依存性が生じます。

“セルフコーチング” は意識的に、時間や場所などを選ばず、自由に行なうことができます。
 日々繰り返すことで習慣化されれば、意識せずともセルフコーチングを行なっているでしょう。つまり、自動的に “コーチング” を行なっているわけです。これが理想であると考えます。

『コーチング』は、コーチ+イング(coach+ing)であるように、現在進行形。単発的なこと、一過性のものではありませんから、継続的な活動をおススメします。

セルフコーチングの一般的な目的

セルフコーチングの一般的な目的は、

  • 自らの能力を最大化されることで、自身の望むゴール・目的を達成すること
  • 現在の問題を自らが解決するために、行動変容させること
  • 自分自身の人生や生活をより良くするため

などです。

『幸せになるため』や『豊かな人生のために』などの抽象的、非論理的な感覚ではなく、「自分にとって幸せとは何か?」「自分にとって豊かさとは何か?」を具体的、論理的に見出していく体系的プロセスと方法を用いて、“目的” を言語化していきます。

セルフコーチングする目的は自身で決める

実際にセルフコーチングを行なう上で、その目的は自分自身で決めることになります。

前記した一般的な目的と照らし合わせながらでも構いません。

コーチングによる効果やメリットなどを踏まえて、活用するに値すれば取り入れてみることをオススメします。

セルフコーチングは『セルフ・コントロール』を行う上でもひとつの手法となり得るでしょう。

セルフコーチングによるメリット

“コーチング” のメリットから言うと、例えば、

  • 曖昧だったゴール・目的・ビジョン・目標などが明瞭になる。
  • ゴール・目的などを達成するまでのプロセス(道筋)や具体策が可視化される。
  • 自分自身の価値観、欲望、思考・行動特性などが整理され、自覚できる。
  • 自身のリソース、強み弱み、長所短所などが明確になる。
  • 必要なものと不要なものが分類できるようになる。
  • 見えていなかった問題が浮き彫りになってくる。
  • 自身の言葉で、自身の考えで、自身の行動で、“気づき” “答え” が得られる。
  • コーチのフィードバックにより、調整する機会が与えられる。
  • コーチとの協働により、不安は軽減され、モチベーションを維持する環境が整えられている。

などが挙げられます。結果的に、次のようなことが生じてくることがあります。

  • 自己肯定感が増してくる。
  • 自信がついてくる。
  • 本来のパフォーマンスが発揮され、目標達成が早まる。
  • 自己成長が実感できるようになる。
  • 対人関係がよくなる。
  • 他人の意見や指示に振り回されなくなる。
  • 他人の目や言葉を気にしなくなる。
  • 人の意見やアドバイスなどを受容できるようになる。
  • 自分の意見を主張できるようになる。
  • 未来の不安・緊張感などが和らぎ、楽になる。
  • 目的があるため、苦しさや辛さに耐えることができる。
  • 問題・トラブルに対して冷静に考え、対処できる。
  • 感情的から論理的な言動に変わる。
  • やる気、モチベーションが向上する。

など。

“セルフコーチング” の場合は、一人で行なうことにより、他者(=コーチ)による “コーチング” よりも多少メリットは減りますが、

  • 他者(=コーチ)に依頼するためのコストはかからない。(コーチング料は無償)
  • 他者(=コーチ)と予定を合わせることがないため、時間・場所の制約がない。(自由にできる)
  • 他者(=コーチ)との相性などを気にする必要がない。

上記は少々ネガティブ的なメリットかもしれませんが、それによって次のようなメリットが生まれます。

  • 主体性や自律性が養われる。
  • 自己制御(セルフコントロール)ができるようになる。
  • 主観性と客観性のバランスが養われる。
  • 大きな目標やゴールに対して挑戦できるようになる。
  • ビジョン達成のための努力を惜しまないようになる。
  • 問題発見力、分析力、解決力などの能力が向上する。
  • 自己効力感(有能性など)が高まり、モチベーションアップの方法を見つける。
  • 他者とのコミュニケーション能力も高まってくる。
  • 本や資料などを読む機会が作られ、知識も増えてくる。

など、様々なメリットが個々人で生じてきます。

デシのモチベーション理論に関与する

セルフコーチングを身につけていくことで、エドワード・L・デシ氏のモチベーション理論に繋がっていきます。

デシ氏のモチベーション(特に内発的モチベーション)というものの要素に、“有能性” “自己決定感” “対人交流” がありますが、セルフコーチングを継続し、ある程度の成果が実感でき始めると、この3要素が良い影響を受けていくために、モチベーションがアップされていきます。

「モチベーションアップにつながる自己効力感の3特徴」>>

結果的に、セルフコーチングによる力強いエネルギーが、自身の中で作られるようになるのです。

セルフコーチングのデメリット

何事にもメリットがあれば、デメリットも介在していることを知っておく必要があると考えます。
 ただし、デメリットに感じるか否かは、人それぞれなのかもしれません。デメリットになることをメリットに変えるヒントとして、捉えてくれれば良いのかもしれません。

“セルフコーチング” のデメリットは、例えば、

  • 自己否定、自己卑下の強い人は向かない。
  • 他人に依存する人には向かない。
  • 客観性に限界がある。
  • 質問内容がパターン化しやすい。
  • “コーチング” に深みがでない。
  • “質問をする” ことが、“詰問” になる。
  • 途中で諦める。または途中で休む。
  • 安易に目標を下げる。または目標を変える。
  • 自己中心的になる。
  • “コーチング” すること自体が目的になる。
  • 効果を自慢し、他人にしつこく勧める。
  • 論理的な “コーチング” が、スピリチュアル的になる。

など。

それ以外に、他者による “コーチング” の場合は、コーチの経験・見識にもよりますが内容に多様性があり、相乗効果が生じます。一人で行う場合、相乗効果は皆無です。

このようにデメリットになる可能性を踏まえた上で対策を講ずることで、メリットを増やしていくことができるのは事実でしょう。

セルフコーチングへの批判

“セルフコーチング” や “コーチング” に対する批判も実際にはあります。

“コーチング” を教える団体、いわゆる講師養成や資格認定などを売りにする団体では高額商品でありながら、受講した方々が活かせず終わってしまっている方が多いこともあるからでしょう。

また、“コーチング” と言いながら、コーチの意見・思考に近い方向へ誘導するような質問を行なったり、スピリチュアル的なアドバイスであったりすることで、コーチングを受けた後に違和感や抵抗感を抱く方もいるようです。

そのため、胡散臭いとか役に立たないなどと批評したり、効果を実感できないと見解を述べたりすることも実際にあります。

人の感じ方は様々のため、コーチとの相性や信頼関係のないところから始めてしまうなどの結果もあるかもしれません。

国際セルフコーチング協会

横浜市中区山手町に、一般社団法人国際セルフコーチング協会(International Self Coaching Organization)という運営組織があります。代表理事は畑中映理子氏、副理事は畑中章嗣氏。

活動主体は “資格ビジネス” で、講座によりコーチング認定者を増やすこと。

「自信が持てない」「自分が好きになれない」「人より劣っているかもしれない」などと感じている人たちのために、サポート・支援できる講師たちを養成する団体です。

人は不完全であるからこそ、生きている間に色々な苦悩と葛藤にぶつかります。それらを乗り越えていくための努力が必要になってきますから、そのための方法の一つとして、コーチングがあると考えます。

日本セルフコーチング協会

東京都八王子市三崎町にある日本セルフコーチング協会(Self-Coaching-Association-Japan)という組織のホームページを見つけましたが、代表理事のご芳名などは不明です。
 上記の国際セルフコーチング協会とは関係性はないと判断しました。

セルフコーチングで活かせる具体的な方法

ゴールの明確化・ゴールと目標の違い

人によっては “ゴール” と “目標” を同類にすることもありますが、コーチングでは基本的に使い分けます。

“ゴール” は大きな目標とも言えますが、“ゴール” に辿り着くためのプロセスにおいて、必達するための道標(みちしるべ)が “目標” となります。

コーチングの考え方,ゴールと目標の違い
(イメージ図)

“ゴール” とは自身の夢に日付(=期限)をつけたものであり、“ビジョン” は “ゴール” に達した際の自身の状態や周囲の状況などを具体的にイメージ(想像)したものです。そして、“ゴール” を達成したい理由が “目的” となります。

“ゴールの明確化” とは、上図のように“ゴール” “ビジョン” “目的” “目標” などが言語化・文字化・可視化されることです。

“質問する” 上での種類と流れ

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
  • クローズド・クエスチョン

相手が『YES!』『NO!』や『1』『2』『3』などの選択肢から答えられる質問方法です。質問に対して考える時間を短縮できる、容易な質疑方法として使われます。

例えば

Q.あなたはカレーライスが好きですか?

Q.野球、サッカー、相撲ではどれを観戦したいですか?

Q.大学に受かりそうですか?

  • オープン・クエスチョン

相手が自由に答えられる質問方法です。人によって “答え” が違ってくることが特徴で、相手の考えや経験などの情報を引き出すには有効です。
 ただし信頼関係が薄い場合、答えることが面倒に感じ、短かったり、嘘の答えが出たりすることもあるため、関係性が大事です

例えば

Q.あなたはどんな食べ物が好きですか?

Q.スポーツ観戦するなら、何がいいですか?

Q.大学に受かるために、どんなことをしていますか?

オープン・クエスチョンには、“拡大質問” と “限定質問” があります。
 “拡大質問” は、Why(なぜ)、How(どうやって)、What(なに)を使う質問方法で、“限定質問” は、Who(誰が)、Where(どこ)、When(いつ)、How many(どのくらい)などを使う質問方法になります。

  • オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを併用すること

コーチングでの質問は、状況に合わせてオープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを組み合わせながら行なうことで、会話の内容を広げていきます。

例えば

Q.あなたはどんな食べ物が好きですか?

A.カレーライスが好きです!

Q.カレーライスは外食でも食べますか?

A.はい! よく食べます。

Q.ランチですか? 夕食にですか?

A.外食では、ランチが多いかもしれません。

Q.よく行かれるお店は近場ですか?

A.平日は会社に近いお店ですが、休日は遠出することもあります。

Q.どの辺りまで行かれるのですか?

A.普段は電車で1時間圏内のお店を探しますが、年に2〜3度、評判の良い店を探して片道3時間ほどかけて行くこともあります。

Q.1時間圏内で、好きなお店はどこにある何というお店ですか?

A.・・・・・

上の質問事例で、もし最初に「カレーライスは好きですか?」と質問し、『嫌い!』と答えが返ってくると会話が続きません。と言っても初対面でいきなり「あなたはどんな食べ物が好きですか?」と質問しても、正直な答えが返ってくるかは不明です。前記したように、関係性は大切です。

また、質問事例の流れの場合、“行動範囲” “頻度” “お金の使い方” などが把握できます。
 もし2つ目の質問の答えで『いいえ! 外食より家で作って食べることが好きです。』と返ってくれば、続く質問は変化します。“調理のこだわり” “オリジナル・レシピ” “料理のスキル” などが把握できるかもしれません。

“セルフコーチング” で大切なことは、質問に対する “答え” に耳を傾け、“答え” につながる特性、背景などを客観的に分析し、理解することです。

GROWモデル(またはGRROW)
  • oal(未来の具現化)
  • eality Check、esource(現状把握)
  • ption(選択肢の発見)
  • ill(意思決定)

頭文字をとってGROW=成長を意味します。

コーチングでの質問では、この流れを意識して質問していくことがポイントになります。