人生の質は決断力より選択力!?

決断力とは? 選択力とは?

「決断力」というワードは色々な場面で使われていますが、「選択力」を使う人を身近で聞いたことはありません。
「決断力」は小学校でも教わった記憶があります。(教わることではないような気もしますが。)でも、「選択力」を学んだ記憶はありません。
 だから『あなたには決断力がない!』と言われることはあっても、『あなたには選択力がない!』と言われることはないでしょう。

ただ、これからは「決断力」と同様に「選択力」は重要な能力となり、「選択力」によって人生の質は変わってくると考えます。

では、「選択力」とは何なのでしょうか?

そもそも、“選択” と “決断” の違いは明確にあるのでしょうか?

「決断」と「選択」の違いとは

『究極の選択』というワードは耳にしますが、「究極の決断」はありません。(意味は通じるかな?!)

ドラマで『君に “選択” の余地はないんだよ』という場面は、「やらない」という選択肢はなく「やるしかない」と “決断”(決断より決意の方が適切かな?)を迫られている状況です。

“決断” と “選択” を思考または行為という観点で、同類にして良いのか、あるいは一連の流れであることで一括りにしても良いのかもしれませんが、各々の辞書的意味で捉えると違って見えます。

※「選択」とは・・・

多くのものの中から、よいもの、目的にかなうものなどを選ぶこと。

(出所:goo国語辞書より)

※「決断」とは・・・

(1)意志をはっきりと決定すること。 (2)正邪善悪を判断・裁決すること。

(出所:goo国語辞書より)

敢えて、当方では別に分けて考えてみます。分ける理由は、論理的に違うと考えているからです。

違い(1)

選択” は、AかB(他複数)を選ぶこと、

決断” は、YESかNOを決めることです。

つまり、それらによっての “結果” が違うということが一点目です。

A or Bの “選択” では、AかBのどちらかを手にすることができるため、その後に何かしらの変化(例えば、安心安堵、喜び、快楽、ライフスタイル、行動内容など)があると言えます。

YES or NOの “決断” の場合は、YSEを選べば、その後に変化が生じますが、NOを選べば、変化はのぞめず現状維持です。

違い(2)

選択” は、選択肢となるAやBなどは、コト・モノになりますので必ず「選ぶ」という行為になりますが、

決断” は、複合動詞的に使われる傾向が強く、〇〇を「する」か「しない」か、の動き(動作、行為、行動など)に連動します。

つまり、それらによる“動き”が違うということが二点目です。

違い(3)

選択” “決断” を同じくくりで考える場合のそれは、時系列で考えてみると、時差があり、プロセスの前後関係であることが三点目です。

第一段階で「選択」があり、第二段階で「決断」が(その逆も)あります。

例えば・・・
 高価なブランドバッグを買いたいためデパートへ行ったのですが、Aブランドのバッグと、Bブランドのバッグで悩んでいるとします。
 価格的にはBがAより1割ほど高いのですが、デザイン的にも機能性としてもBが有利です。ただ、Bブランド店よりAブランド店の接客の方が心地よく、気持ちが揺らいでいるシーンです。
 結論は、『バッグは買わない!』という決断に至りました。

このシーンでは、“選択” と “決断” が時差的に発生しています。つまり、違い(3)に該当します。

AとBの選択肢があることで、『どちらを買おうか?』と “選択” のステップです。次に『バックは買わない!』と “決断” したことになります。
 これがもし、Bの選択肢がなくAのみなら、悩み方は「買う」か「買わない」かであるため、“選択” のステップはなく “決断” だけになるでしょう。

この時の「買う」or「買わない」が『選択肢になるのでは?』と考えることも可能ですが、“選択” の意味合いである『目的にかなうものなどを選ぶ』と照らしわせると、コト・モノの “選択” という行為ではないと考えて良さそうです。これは、違い(2)に該当します。

そして、この例えの結果を踏まえて考えてみると、
「バッグを買おう」という意図があったため、“選択” するAもしくはBのどちらかのバッグを入手することになります。それにより、その日以降、バッグを持って出掛ける楽しみとしての行動、洋服に合わせるコーディネートの行動、あるいは合わせるための洋服の購入、もしかしてバッグのコレクションとして部屋に飾る、などの変化・変容があるわけです。

しかし、「買う」or「買わない」の “決断” にフォーカスすると、買えば先ほどのような行動に変化・変容が生じますが、買わなければ、今まで通りで何の変化もないということが言えます。違い(1)に該当します。

ここまでは “決断” と “選択” の違いについて、考えてみましたが、ここからが本題です。

選択理論とABC理論の応用

選択理論

米国精神科医ウイリアム・グラッサー(William Glasser)医学博士により提唱された『選択理論心理学』というものがあります。

選択理論とは

(出所:アチーブメント株式会社HPより)

選択理論は、すべての行動は自らの選択であると考える心理学です。自らの行動を選択できるのは自分だけなので、自らの行動は他人に選択されないし、他人の行動を選択させることもできないと考えます。

選択理論(旧名:コントロール理論)によれば、外部からの情報(刺激)に対する反応において、個人の解釈により行動の選択を行い、実際の行動へ反映されます。

上の図では、電話の着信音からディスプレイに映し出される文字(電話番号または登録した名前)を認知した後に、電話に出る or 電話に出ない、の実際の行動は、“+の解釈” か “−の解釈” によるものとして説明しています。

ABC理論

ABC理論は、臨床心理学者アルバート・エリスによる論理療法(REBT:Rational Emotive Behavior Therapy)です。

ABC理論とは

ABC理論
刺激と反応のイメージ図

事実A(Activating event=出来事・五感からの情報)に対して、信念体系B(Beliefビリーフ)により反映され、C(Consequence=感情、行動など。続いて起こる結果や成り行き)が生じるという、刺激と反応のプロセスを示しています。

ABC理論,論理療法,REBT
アルバート・エリスのABC理論

信念体系B=ビリーフが、ポジティブ or ネガティブ、論理的 or 非論理的、などの相反する状態により結果は全く別のものになる、というのがABC理論に基づいた考え方です。

前記の『選択理論』と後記の『ABC理論』から察するに、実際の行動を選択するのは自分自身であり、自分自身のビリーフまたは思い・感情・思考などによって、その時点での選択を決める、ということが言えます。

選択理論とABC理論を踏まえて

選択理論では『行動は最善と思ったものが選択された結果だと考えられる』とありますが、結果的に “最善” であったかどうかは別問題です。

例えば、「恋人からの電話」だから電話に出たが、

  • 話をしていたら喧嘩になり、別れを告げられた
  • 職場で嫌なことがあったらしく、長々と愚痴を聞いていた
  • 電話に出ないと後で怒られるため、仕方なく会話した
  • 恋人の電話先で異性の声が聞こえ、浮気を疑った
  • 相手は恋人の親で、別れろ!と言われた

という結果が待ち受けているかもしれません。

例えば、「嫌な上司からの電話」だから電話に出なかったが、

  • 新規顧客の依頼だったらしく、同僚が代わりに対応。機会を逃してしまった
  • クライアントからの苦情だったらしく、上司が対応。帰社後に激怒された
  • トラブル発生だったらしく、先輩が迅速に対応。担当を下ろされた
  • 役員とのランチの誘いだったが、後輩が同席。栄転のキッカケを失った
  • 期限を忘れていたため、催促の電話だったが、期限を守れず信用を失った

という結果が待ち受けている可能性もあります。

結果そのものは選べませんが、その時点での “最善” である “行動の選択ができる” という点で考えると、選択理論の “行動の選択” とABC理論の “B=ビリーフ” は繋がりがあり、“B=ビリーフ” によって “行動の選択” を行なうと踏まえれば、“B=ビリーフ” の状況に応じて “行動の選択” が変わると言えます。

例えば、「恋人からの電話だから電話に出る」とは別の選択として、「恋人からの電話だが、〜」

  • 勤務中のため、プライベートの電話には出ない
  • 電車内だから、マナーとして電話に出ない
  • 恋人を焦らすために、あえて電話に出ない
  • 長話に付き合う気分にないため、出ない
  • こちらの都合でかけ直せばいいと思い、出ない

このように「電話に出ない」選択は、様々なビリーフによって実行されることもあり得るというわけです。

例えば、「嫌な上司からの電話だから出ない」とは別の選択として、「嫌な上司からの電話だが、〜」

  • 仕事中だから、上司から業務についての指示だろうと思い、電話に出た
  • 後で愚痴を言われるほうが嫌だから、電話に出た
  • 話さなければならないなら、直面より電話がいいから、出た
  • トラブルや緊急の内容かもしれないと考え、電話に出た
  • 嫌でも上司は上司という事実。割り切って電話に出た

このように「電話に出る」選択は、個々のビリーフによって実行されると捉えることができます。

最良の選択は、自分自身次第ということです。

決断力と選択力について

「決断力」については一般的にも多く使用されているため、ある程度の概念は多くの方に共有されています。「決断力」とは、自分の意思と責任で決定する能力・スキルです。

先ほどの例えを使うと、『バッグは買わない!』という決断をした場合、その理由について予想してみましょう。

Q.『買いたいからデパートへ行ったのに、なぜ、買わなかったのか?』

それは‥‥

  • 一緒に買い物へ来ていた友人に「買うことを止められた」から
  • 悩み過ぎて胃痛が襲い「気分が悪くなった」から
  • 時間がかかり過ぎて空腹になり「食事したかった」から
  • Bブランド店の接客に嫌気がさし「買う気が失せた」から
  • AのバッグもBのバッグも「予算オーバー」だったから
  • 次の予定があって「買う時間がなくなった」から
  • ネットショップで調べたら同じバッグが「安く売られていた」から
  • ネット上での商品レビューが「良くないことを知った」から
  • 考える時間・日数を作り「それでも欲しかったら買う」ことにした
  • 「他のブランド店のバッグも見てみたい」と考えたから
  • 近々新作が発売されるネタが聞こえ「関心が新作に向いた」から
  • ブランドバッグを買う目的を自問し「見栄であることに気づいた」から
  • 冷静に考えて自分の「ファッションセンスには合わないと感じた」から
  • 自分で買うのをやめて「親に買ってもらおうと企んだ」から
  • 誕生日プレゼントとして特定の人に「強請ることを思いついた」から
  • お金を貯めて「6ヶ月後までに買うと決めた」から
  • 地震があり、家で留守番している「ペットのことが心配になった」から
  • 個人売買サイトに出品された時に「買うことにした」から
  • 買取専門店で「中古品が売っているかも」しれないから

など色々想定できますが、これらの中に「選択力」に関わることがあります。

選択力のアップ

では「選択力」とは何でしょうか?

意味を調べても定義は確定していないようですが、選択のための能力であることは間違いありません。ここで伝えていることも選択肢の一つとなる情報でしかありませんので、参考にしていただければと考えています。

念頭に置いておくことは、選択や決断によってもたらされた “結果” そのものは選択できないということです。
 想定していた “結果” より、良い場合もありますが、悪くなる場合もあるでしょう。『あれ? 思ってたのと違う!』みたいな感覚です。つまり、“結果” は絶対的なものではなく相対的なものであって、その “結果” を受容することも「選択力」に含まれていると言えます。

選択力,決断力

次の「選択力」に関する項目を具体化していくことで、「選択力」を理解すると同時に、選択力アップへつながります。

  1. 選択する基準=コアを明確にすること
  2. 選択する機会を見極めること
  3. 選択肢を分析すること
  4. 選択肢を調整すること
  5. 選択したコト・モノを活かすこと

1.選択する基準=コアを明確にすること

選択するための判断基準=コア(目的、ビジョン、価値観など)を自身の中で明確にしておくことは大切で、中途半端だと選択した後に後悔することが増えてきます。他人の意見に左右されたり、第三者の評価に影響を受けたりして、選択する際の自分の主体的な意思が反映されないこともでてくるでしょう。

「なぜ必要なのか?」などの基準となる核を自身の中で確立しておく必要があります。

これにはもう一つ理由があって、核となる意識を強めることで(潜在的意識が関与するのかは不明ですが)、選択肢の幅(または数)が増やすことに役立ちます。

2.選択する機会を見極めること

人は『限定品に弱い』とされていますが、選択肢の中には期限や制限があることで、慌てて飛びついた結果、失敗することもあります。逆に機会を逃すことで、後々に選んだとしても効果が薄れてしまうこともあります。

普段からの情報分析、情報を持っている人とのつながり、迅速な情報収集の方法などを元に、短時間でも判断できるような能力は必要です。次の機会が既に見えているのなら、それも含めて選んでいきます。

3.選択肢を分析すること

選択の基準(目的など)と照合しながら、選択肢になり得るのか、選択するための優先順位は何か?選んだ際のメリットやデメリットは何か?選んだ後の繋がりはどうだろうか?などを細かく分析していきます。マトリックス的なフレームワークで可視化することも手段ですし、それ以外の分析方法を身につけておくことは大切です。

その選択肢、あるいは分析する方法などを一度疑ってみることも必要な場面があります。過信せず、疑った後に「これで良い!」と確信が得られたら行動に移すことも選択肢のうちです。

4.選択肢を調整すること

『選択肢が多いと選べない』とも言われていますが、選択肢が多い場合は、分析により得た情報を踏まえて減らします。逆に選択肢が少ない場合で増やせる内容であるなら、新たな選択肢を増やす活動を適切に行ないます。

選択肢とは情報を集める方法、分析する方法なども選択肢を増やし、その都度適当な方法を選ぶことも含まれます。

5.選択したコト・モノを活かすこと

選択したコト・モノがベストな選択であったかは不明です。結果的に「これで良かった!」と思えるよう、選択済みのコト・モノを活かすことがポイントになります。

もし後悔するようなら、選択するプロセスが間違っていたかもしれません。選択力は選択後の行動も大切です。

もし「決断力が乏しい」人であっても、「選択力」をアップさせることで、次第に「決断力」はアップしていくと考えています。
「決断力が乏しい」のは、大抵自分自身に決断する理由がないこと、あるいは決断後の結果を想像できないことなどが挙げられます。決断の前に行われることの多い「選択」の精度を向上させることは、決断する意味、意図、目的が明確になり、決断後の結果を想定することもできるようになるはずです。

もし「選択をしない」「自分を変えない」「今は決断をしない」……ということがあれば、それもまた選択であり決断したことです。
「先延ばしすること」も「自分を嫌うこと」も「他人を信じないこと」も「毎日愚痴を言うこと」も「仕事を嫌々すること」も「ダイエットしないこと」も「ヘビースモークや深酒」も……全てが選択であり決断によるものです。

言えることは、「正しい選択」「正しい決断」が「質の良い人生」につながるファクター(要因)になること。そして「正しい選択」「正しい決断」は、他人にではなく自分自身で行なうことに間違いありません。

最良の選択と適切な決断

例えば、あるお店での買い物の場面。

「選択」は、A商品かB商品かを選ぶ行為ですから、結果的にA商品かB商品、どちらかを入手することができます。「決断」は、A商品を買うか買わないかの意思表示ですから、結果的に(買うことで)変化をもたらすのか、(買わないことで)現状維持するのか、ということになります。

この場面では、A商品のみの場合に代替となる(比較対象となる)B商品を探し出し、多視座から分析し結論に至る状態まで実践するのが「選択力」。
 ABを比較、そして買うか買わないかを判断、適切に決断できることが「決断力」です。

ここで考えたいのは、「正しい(最良の)選択」と「正しい(適切な)決断」は別であるということ。

高価な買い物をする際、選択が最良でなくても結果的に満足すれば(良ければ)「適切な決断」になるし、「最良の選択」であっても結果的に大きな負担があれば「正しい決断」にはならないかもしれません。

例えば

パソコンの購入。

ノーマルグレードのAパソコンとハイグレードのBパソコンで悩んでいるとします。価格が3万ほど違うのですが、Bパソコンのスペックと機能は最高度。しかし、悩んだ末Aパソコンを購入しました。
 数ヶ月使用してみて問題ないようであれば、その決断は「適切」であったかもしれませんが、「最良の選択」とは言えないかもしれません。途中でスペックの低さがストレスになり、さらにスペックをアップするために数万を支払うことになるかもしれません。(あの時3万円程度ならケチらければ良かった、と)後悔することもあります。
 もし、Bパソコンを購入していたら、スペックなどの低さにストレスを感じることも別費用がかかることもなかったでしょう。Bパソコンは「最良の選択」かもしれませんが、その3万円の負担が大きいと「正しい決断」とは言えない可能性もあります。
 差額が3万円でなく5万円以上なら、その決断は後悔することになるかもしれません。

このように「正しい(最良の)選択」と「正しい(適切な)決断」は、場面や視点によって別の判断であると捉えることができます。

確実に言えることは、間違った選択の場合は、間違った決断になることです。

選択と決断のための基準

さて、その「選択と決断」を行なうにあたっては、必ずそこに基準があります。個人においても組織内でも基準があって選択と決断を行ないます。

今の人生を変えたい、自分に自信がない、何をやっても続かない、成果が出ない、などと思っている人は、日々行なわれている選択と決断の行為のための基準がどこにあるのか?……ということを考える時間が必要となります。

その選択と決断の基準になる代表的なものが、「価値観」です。別の表現で「自分のルール・拘り」です。人生のフレームとも言えます。

選択と決断を行なう際に、自分に合っているか、適しているか、楽なのか、便利なのか、メリットがあるのか、欲しいのか、必要なのか……などを判断する境界線であり、フレーム内であればOK(○)、フレーム外であればNG(×)、と判断できるのは、この「価値観」「ルール」があってのことです。
 そこには、一貫性が必要です。同じことに対して、昨日はOK、今日はNG、では一貫性がありません。それは「価値観」「ルール」とは言わないでしょう。

要するに、「決断できない人」「優柔不断の人」「判断がその都度変わる人」などは、価値観やルールが曖昧であると言えるのではないでしょうか。

人生の中で、真剣に “決断” と “選択” を行うことが、どれほどのものなのか、大半の方は感じていないように思えます。人生一度きりです。流される人生ではなく、自分でキッチリ “決断” と “選択” した人生を歩めれば、どれだけ素晴らしいことでしょうか。
 その場の感情などで決めるのではなく、できる限り論理的に、質の良い “選択” と、正しい “決断” を行うことが重要です。

セルフ・コーチングの質問Dana

  • 「選択力」を強化するために、どうすれば良いですか?
  • 質の良い “選択” のために、何ができますか?
  • 「決断力」を身に付けるために、そうすれば良いですか?
  • 正しい “決断” をするために、何をしますか?
  • 最良の人生を歩むために、何を選択し、いつ決断しますか?