キャリアパスとは
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キャリアパスとは
会社組織内での人材育成・人材開発に関わる「キャリアパス」(Career Path)というものがあります。
キャリアパスは一般的に、会社側から個人に対して、昇格や昇給に連動するプロセスや基準、枠組み(フレーム)を体系的に明確化(可視化)したもので、全ての従業員が平等に挑戦できる機会が与えられているものと言えます。
キャリアパスは個人にとって取り組みやすい「キャリア・デザイン」の一環です。
会社組織による “社内” という限定的な内容が主となります。例えば、
- 係長・課長・部長に昇進するために、どうすれば良いのか?
- 階級を上げ、給与アップするために、何をすれば良いのか?
- 契約社員から正社員になるためには、どうすれば良いのか?
- やりたい業務・部署へ移動するための方法は何があるのか?
係長・課長・部長へ昇進するための経験年数、実績・成果、他者評価、能力、資格、昇格試験などの複数要素ごとに基準(クリア条件)を定め、従業員全員にチャンスを与える制度が主流となりました。
上司に媚び、気に入られることで出世していた時代、企業もあったようです。大手企業で行われていた社内賄賂(出世するために権限者へ金銭を渡すなどの行為)の悪しき伝統が問題になり、昇進・昇格を透明化・明確化した適切なキャリアパスをし始めたのは、最近のことです。
キャリアパスとキャリアデザインの違い
「キャリア・デザイン」は、個人の主体性・自由性・自己評価型が特徴で、仕事と生活を含む人生設計です。
「キャリアパス」は、会社組織が主体となり、統制的で、個人にとって他者評価型です。会社組織に所属することで効果が生じます。
キャリアパスの概要
組織内のキャリアパスは、個人が目指す目標の種によって2分類できます。
- 昇進(出世)や配置異動(人事異動)に関すること
- 昇格(階級アップ)に関すること。業務・職務に関しての経験と見知を深め、専門度(プロフェッショナル度合い)を高めること
❶❷を分類した意図は、対象と制限の違いがあるからです。
キャリアパスを導入する上で、❶の昇進できる人数、異動できるキャパには限りがあります。また昇進や配置異動を求める人は限定的です。そのため、キャリアパス制度に多くの従業員が関わるためにも、❷のような人数など制限のない設定が必要になります。
最近、昇進・出世に関心のない人が増えてきていることを踏まえ、❷の個人スキルや経験値にフォーカスしたキャリアパス制度の導入は数多くあります。
❷によって❶が反映されるパターンが大半ですが、金銭的価値よりも自身の仕事が好きで誇りを持っている人には、❷の設定強化は効果的です。
会社組織によっては、そのための特別研修やeラーニング、資格受験のための勉強会など、学びの環境を準備し、人材育成コストの予算組みやキャリア・アドバイザーを配置するなど、バックアップ体制を整えたところもあります。(活用されているのかは別にして……)
従業員が組織内での目標を設定しやすくし、辿り着くための道筋や方法、条件などを明らかにしたことで、働く人たちが未来に向けて進むべき道を自分事とし、主体的に仕事へ取り組むことができます。モチベーションが高まることで、個々人の能力アップ、生産性の向上などシナジー効果をもたらすことが期待できます。
キャリアパスのデメリット
キャリアパスの制度は会社組織主体、あるいは設計する人の主観で作られているため、偏ってしまいます。それにより、
- 会社規模(従業員数)に適していない
- 実際の業務とキャリアパス要件に乖離がある(意味がない)
- 基準や条件が厳しく、クリア困難な設定になる(取り組む姿勢がない)
- キャリアパスと報酬との連動に説得力がない(従業員が満足しない)
- キャリアパスの設計内容が頻繁に変更される(従業員の不満が生じる)
- 基準要素に対するポイント(係数)が曖昧(不平等があった時点で終わる)
- 個性や特性が加味されていない(対象者が絞られる)
- OJT・OffJT研修や教育の場がない、または少ない(離職する結果になる)
などがあることで、従業員のキャリアパスに対する関心は失せ、モチベーションが下がり、生産性も悪化、さらに離職する方も生じます。
もし、『部長になりたい!』と思ってどんなに頑張っても、部長の席にいる上司が定年するか退職するまで、部長になる可能性は低くなります。今の部長を降格させる下克上的な人事考課制度ができているなら可能性はありますが、日本の場合の降格は「合理的」でなければ労働問題に発展する恐れがあります。
結果的に万年課長、万年係長の存在は、出世意欲のある他の従業員にとってキャリアパスを活かせない『絵に描いた餅』となるでしょう。
キャリアパスの設計は、経営者や人事担当、あるいは専属社会保険労務士の知識や経験などによる創作物です。つまり、基本知識はあっても会社組織に適したものになるかは別。他者・他社のキャリアパス制度を、ただ真似て設計しているようなこともあるはずです。
結果的に、制度が活かされてなかったり、見直しもされず古い制度だったりすることもあり、本来のキャリアパス制度の効果性と価値を見落とし、キャリアパスを設定することが目的となることで、細々とした制度になってしまうことは、経営者側の意識の問題と言えます。
キャリアパスは選択肢の一つ
キャリアパスは全員を対象にしてチャンスを与えているようですが、実態として “望む者” “一部の者” のみを対象としている傾向が強いかもしれません。
そうであっても、個人が設計するキャリア・デザインの一プロセス、または戦術として取り組むことで自己成長し、キャリアビジョンに近づけるのであれば、活かさない手はありません。
キャリアパスはキャリアデザインの中の選択肢の一つです。
その際、会社選びにも慎重を期しますが、勤め始めてから自身の構想、狙いと相違があっても冷静に分析し、リプランすることができれば、次のステップへと繋がります。
勤め始めた時は曖昧だったものが、キャリアパスをもとに活動している最中に、新たな知見によって、より大きなビジョンを発見することもあります。会社組織のキャリアパスで限界を感じた時は、俯瞰的に社会を見渡し、外へ目を向け、トライすることを忘れてはならないと考えています。