※2013年4月22日の記事のリライト(編集中)です。

雇用主・使用者(会社など)と、被雇用者・労働者は、法律上対等な立場であり、ある意味、協力関係・共存共栄の関係です。

ただ実態は違い、どんなに対等であることを叫んでも、日本の雇用主・使用者は、伝統的上意下達が “大好き” ですから、対等関係ではなく上下関係になりがちです。ワンマン経営者は顕在です。令和になっても、『嫌なら辞めればイイ!』『使えねくせに文句ばかり言うな!』『雇ってやってるんだ、ありがたく思え!』などが未だに “あるある” の冷倭社会です。

近年では【ブラック企業】とラベリングされる会社もありますが、【ブラック従業員】とラベリングされてしまう労働者もいるようです。そんな関係性を続けて何か得でもあるのか、疑問しか残りません。

そんな社会の中でも、雇用主・使用者と被雇用者・労働者の関係が良好なところもあるようです。色々な取り組みをしておる会社も徐々に増えてきたのでしょう。

さて今回は、労働者自身が自らを保護するために、最低限知っておくことが必要と感じる労働法の基礎部分をピックアップしてあります。特に労働者からのクレームとなるのは、賃金支払いに関すること、解雇・退職に関すること、労働時間や休日の扱いに関すること、です。
雇用主・使用者の方も是非、ご参考にしてください。

労働法の基本とは?

【参考】国際労働機関(ILO)及び条約

国際労働機関(ILO)は国連の専門機関のひとつで、労働問題を取り扱う。
1919年設立、本部:スイス・ジュネーブ。2019年3月現在、187カ国が加盟
190条約、206勧告が国際労働基準として設定。
日本の批准条約数は49条約のみ。)

<ILOの目的>

ILOの目的は、社会正義を基礎とする世界の恒久平和を確立すること。
そのために、

(1)国際労働基準の設定とその実施状況の監視
(2)技術協力・援助
(3)調査・広報
という3つの手段が定められている。
<三者構成原則>

政府に加え、労働者と使用者の代表が正式の構成員として参加すること。
日本では、日本政府と連合(日本労働組合総連合会)日本経団連(日本経済団体連合会)の三者構成。

<労働法の基本的なこと>

日本の労働法の基本

憲法28条の労働基本権(労働三権)の理念に基づく労働三法(労働関連法の根幹)によって、対等な労使関係(労使とは、労働者と使用者のこと)を基本としています。

【 労働三法 】
  • 労働基準法
  • 労働組合法
  • 労働関係調整法

労働法(労働法という法律はなく、総称として呼ばれているもの)に該当するものは数多くあり、上記三法の他には、例えば‥‥

労働契約法、最低賃金法、男女雇用機会均等法、労働安全衛生法、パートタイム・有期雇用労働法労働者派遣法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法、労働者災害補償保険法、育児・介護休業法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法、家内労働法、勤労青少年福祉法‥‥など。

全て覚えるのは大変なので、日頃よく使うだろう(揉めるだろう)事項を後ほどピックアップしています。

労働基準法の大原則は生存権

憲法第25条
『すべて、国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。』の生存権を保障しており、これを労働条件の分野で具体化した規程が【労働基準法】です。

労働基準法の第1条第1項に
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営む為の必要を充たすべきものでなければならない。』とあるのは、働く人が人間として尊重されるような生活が営めるだけの労働条件を確保する、と宣言したものなのです。

つまり、労働基準法は
“労働条件の最低ライン”
です。

雇用主・使用者側から『法律に触れてない(違反してない)から問題ないよね!!』と安易に労働者へ伝えている時点で、“最低ライン” は守ってる経営者です!と公言しているようなものです。

◆法律・規則・命令・判例・行政解釈の関係
労働基準法は本則わずか120条程度の法律の為、専門的・技術的な詳細は別の法令、あるいは下位の規範である命令(規則)に委任し、又規程が抽象的である為、解決できない問題が発生した場合に、裁判所による判例が重要視される。さらに、実際に労働監督行政機関により示された行政解釈(法解釈の指針)の通達も実務上重要な影響力をもつ。

労働契約をする際に関わること

労働契約について

労働に関わる契約(労働供給契約)

まず、労働に関する契約の考え方は【民法】にあります。そのうちの一つとして、

(民法 第623条)

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

これが一般的に言われる「雇用契約」となり、その詳細等を定めた労働基準法等を適用する諸々の契約を「労働契約といいます。

※ 雇用以外の労働供給契約には、「請負」(民法第632条)と「委任」(民法第643条)の形態があります。

【労働契約する際のポイント】

(労基法第2条第1項、労契法第3条第1項・第6条)

  • 労働者と使用者は対等な立場である。
  • 労働条件は双方の合意のもとである。

(労基法第13条、労契法第12条・第13条)

  • 合意後、無効な労働条件の部分は、法律の基準による。

(労基法第15条、労契法第4条)

  • 労働条件は締結時に必ず明示する
労働契約で生じる双方の義務
  • 労働者の義務]‥‥誠実労働義務、秘密保持義務、競業避止義務
  • 使用者の義務]‥‥賃金支払義務、安全配慮義務
労働条件の明示

(労基法 第15条、労契法 第4条)

明示される書面の名称は会社によって様々です。
雇用契約書” と言えば一般的に通用しそうですが、他名称なら “労働契約書” “労働条件明示書” “労働条件通知書” など、派遣社員の場合は “就業条件通知書” などがあります。
名称はともかく、賃金や労働時間など厚生労働省令で定める事項について、定められた方法(書面等)で明示することになっています。『口頭での明示!』という雇用主がいたら、契約しないことをお勧めします。
その明示された労働条件が事実と相違している場合は、労働者は即時に労働契約を解除することもできます。

※ 平成31年4月1日以降、書面による明示が原則でありながら、労働者が希望した場合、FAX・Eメール・Webメール・SNSメッセージ機能等も可能になりました。ただし明示事項が印刷、保管できることが前提です。

(注)労働条件とは雇用契約書のみではない!

就業規則も労働条件明示の書類に
就業規則とは?

(労基法 第89〜90条)

常時10名以上の労働者(パートタイマーやアルバイトも含む)を使用している事業場では、就業規則を作成し、過半数組合又は労働者代表の意見書を添えて、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない法的な書類です。就業規則を変更する際も同様の手続きが必要になります。
就業規則に記載する事項は法で定められている事項と任意の事項があります。(絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項というもの)
そして、就業規則は作業所にて掲示、備え付け、書面交付などにより労働者に周知させること(労基法 第106条)になっています。つまり、役員室などの書棚に置き、労働者が容易に閲覧できない状態では、周知させたことになりません。

労働契約期間について

雇用契約の期間については、「無期雇用」と「有期雇用」があります。

[無期雇用]‥‥
雇用期間の定めがないため、会社の定めた定年まで勤務することが可能です。(正社員など)

[有期雇用]‥‥
雇用期間が定められており、期間終了日までの勤務か、契約期間の更新を行なって勤務するタイプです。(パートタイム、契約社員、期間社員、派遣社員、嘱託社員など)

◆有期雇用の更新有無の明示◆

契約の締結時に、更新の有無、及び更新する場合の判断基準を明示します。又、前記した契約の内容に変更等が生じた場合も、速やかに労働者に明示することになります。
契約期間の “更新の有無” に関しては、①自動的に更新する ②更新する場合があり得る ③契約の更新はしない などを具体的に明示します。

※ ①“自動的に更新する”の注意点は、更新前と更新後の労働条件が同一であることが前提であるため、明示している契約期間(開始日〜終了日)が『同一であることはあり得ない』との法的解釈も存在し、多くは更新した時点で「期間の定めのない契約」と位置づけされる傾向がある。

◆有期雇用者の無期転換ルール(労契法 第18条)◆

有期の契約期間を繰り返した結果、通算して5年を超える労働者に対し、無期雇用になるかどうかの選択肢が与えられたルール。雇用主・使用者は労働者の意思について拒否できない。労働条件を下げたりする事もできない。

◆ 有期雇用(有期労働契約)の期間(労基法 第14条)

1回の雇用契約期間は、1日から最長3年(原則)まで

※ 厚生労働大臣の定める専門的知識等を要する業務につく場合、及び満60歳以上の者を雇用する場合は、契約期間の上限を5年

※ 高速道路建設やダム建設などの事業の完了日が明確になるプロジェクト型の限定事業での労働は、3年を超えて契約可能

※ 契約が何度も更新されて最長3年ではなく、1回の雇用契約上のこと

※ 契約期間「1日」は可能。但し、派遣社員の場合は違法(日雇派遣禁止事項)となることもあるため注意

他、労働契約時の主な留意点
  • 均等待遇の原則
    (国籍、信条、社会的身分を理由とする労働条件の差別をしてはいけない)
  • 男女同一賃金の原則
    (女性を理由として、賃金について男性と差別的取扱いをしてはならない)
  • 男女雇用機会均等の原則
  • 強制労働の禁止
    (暴行、脅迫、監禁他精神・身体の不当拘束により、労働を強制してはならない)
  • 中間搾取の排除
    (法定外で、業として他人の就業に介して利益を得てはならない)
  • 公民権行使の保障
    (労働時間中の公民権行使について保障する)
  • 賠償予定の禁止
    (労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額の予定する契約をしてはならない)
  • 前借金相殺の禁止
    (前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない)
◆ 内定通知について

内定通知(書面・電話等)の時点で、労働契約は成立すると判断されることもあります。内定取り消しは、やむを得ない事由として認められない限り、解雇と同様扱いになる可能性もあります。

◆ 身元保証に関する手続き

採用に際し、労働者に対して身元保証契約をする場合のみの手続き。この内容については「身元保証に関する法律」に準じます。

  • 保証契約期間は最長5年、期間を定めてない時は3年
  • 労働者の勤務地の変更、責任範囲の変化、又保証人の責務が発生する可能性がある場合は、保証人に通知すること
  • 保証人は将来へ向けて、身元保証契約を解除できる
  • 保証する限度額(極度額)を定めていない場合、無効となる可能性もある
  • 保証人の損害賠償責任は、裁判所が決定する
  • 違法となる不利な特約は無効となる

労働契約の条件について

賃金支払いについて

賃金とは、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべて(割増賃金・交通費・手当など)のもの。

賃金支払いの五原則

(労基法 第24条) ※臨時的・一時的な手当、報奨金、賞与等は当てはまらない

通貨払いの原則

現金で支払うべき
(労使協定又は労働者の同意が得られれば振込可能、物品NG)

直接払いの原則

本人に支払うべき
(未成年であっても本人へ ※代理人はNG、使者はOK)

全額払いの原則

その期間に稼働した分を全額支払うべき
(法令控除金、協約相殺金天引額)

毎月払いの原則

毎月1日〜末日までの間に、1回以上支払うべき
(日払い・週払いOK、2ヶ月に1回はNG)

一定期日払いの原則

毎月の支払う期日を決めるべき
(“月末払い”はOK、“毎月第3月曜支払い”はNG)

最低賃金の厳守

(労基法 第28条) ※最低賃金法に準ずる

最低賃金には「地域別最低賃金」と「産業別最低賃金」の2種があります。また頻繁に法改正されるため、都度確認する必要があります。

[地域別最低賃金]‥‥
都道府県ごとに定められている最低賃金。一般的に厚生労働省HPや全国版メディアで公表されるものはコチラの情報が多い。

[産業別最低賃金]‥‥
各都道府県にて産業ごとに設定される最低賃金。地域別最低賃金より高くすることが決められている。各労働局や労働基準監督署にて公表される。

  • 賃金支払い形態には、時給・日給・月給・年棒制・(出来高制)があるが、最低賃金額の表示単位は時間とする。(日給・月給等の場合、所定労働時間で除算した時間当たりの賃金で判断)
  • 最低賃金については、憲法25条の『健康で文化的な最低限度の生活』を営めるような水準を前提に決められるため、事業・業種及び地域に応じて定められる。
  • 最低賃金以上の支払いがない場合は、雇用主・使用者に罰金刑(50万円以下の罰金)がある。
◆ 最低賃金の算出から除外されるもの
  • 賞与など1ヶ月以上を超える期間ごとに支払われる賃金
  • 結婚手当などの臨時の賃金
  • 時間外、休日、深夜の割増賃金
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当など
◆ 最低賃金の減額特例規定となる場合(各都道府県労働局長の許可要)
  • 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
  • 試用期間中(入社から14日間)の者
  • 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定の者
  • 軽易な業務に従事する者又は断続的労働に従事する者で、厚生労働省令で定める者
賃金からの控除・相殺について

法令で定められている税金(所得税、住民税等)や法定保険料(社会保険料、雇用保険料等)は、決められた税率、保険料労働者本人負担分を賃金から控除できます。

※ 住民税の控除については、雇用主側で設定できます。

※ これら以外については、労使協定等で同意を得られているものは控除可能です。
例えば、食事代・購買代金・駐車場代・作業服代等、週払い金・前払い金(稼働分が前提)等。

◆ 労基法第91条で定められている制裁規定(減額)は、就業規則上で記載されていること。

労働者に対する減給の制裁については、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えない程度、又1賃金支払期間に数回の違反行為があったとしても、その減額総額は、1賃金支払期に支払われる賃金の10分の1を超えない額。

賃金の端数は切り上げる

賃金は、労働者に提示した額を下回ってはいけません。(四捨五入ではない)

(例)
時給925円 × 労働7時間15分 = 6,706.25円
* 端数の0.25円は切り上げるため、結果6,707円になる
時間外労働・深夜労働の賃金
◆ 時間外労働は、賃金の25%以上の割増(加算)

(労基法 第37条第1項)
時間外労働とは、基本的に残業(1日労働8時間超え)と所定休日=法定外休日の出勤(週労働40時間超え)のことです。

※ 1ヶ月間で60時間超えの時間外労働分は、50%以上の割増(中小企業適用は猶予期間がある)
または、60時間超えの割増(25%以上)分を有給休暇に宛てがうことが可能(労基法 第37条第3項)

注意!)ここでいう「賃金」は、基本給ではない!

(例)
時給1,000円、交通費月額1万円、皆勤月額1万円、月所定労働160時間の場合。
* 時間外労働に対する割増額は、
1,000円/時 × 125% = 1,250円/時…ではなく、
( 1,000円/時+皆勤1万円÷160時間)×125%で算出、結果1,329円/時(端数切上げ)になる

※ 割増賃金算出の対象外手当は、交通費・家族手当・住居手当に該当するもの、複数ヶ月以上で支払われる手当

(参考)中小企業の定義(厚生労働省による)

業種(大分類) 資本金・出資総額 常時使用労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外 3億円以下 300人以下
◆ 深夜労働は、賃金の25%以上の割増(加算)

(労基法 第37条第4項)
深夜時間とは、基本的に夜10時(22時)から朝5時(29時)です。会社によっては、夜11時から朝6時(厚生労働大臣の要承認)のところもあるため、確認しましょう。
但し、休憩時間は含まれないことが多いです。

◆ 法定休日出勤は、賃金の35%以上の割増(加算)

(労基法 第37条第1項の政令(平成6年政令第5号))
法定休日とは、一週1日の休み、四週4日の法定の休日のことを指します。会社によって、就業規則や年間就業カレンダー等で、法定休日を設定していますので、確認しましょう。
例えば、月曜〜金曜は勤務日、土曜は所定休日、日曜は法定休日、と定めている会社が多いようです。

手当の規定

手当(通勤手当含む)については、法律上支給しなければならないものではなく、事業所で決めることが出来る。ただし、就業規則等で記載することが望ましい。

◆ 通勤手当(交通費)の課税区分

通勤手当に該当するものは、課税範囲、非課税規定が決まっている(国税庁資料)

(1)公共機関、有料道路での通勤・・・・全額非課税(但し、月額15万円)

※ 合理的な運賃等とされている

(2)車両通勤・・・・非課税となる1ヶ月当たりの限度額(国税庁参照
片道の通勤距離 1ヶ月当たりの限度額(H28.1現在)
2km未満 (全額課税)
2km以上〜10km未満 4,200円
10km以上〜15km未満 7,100円
15km以上〜25km未満 12,900円
25km以上〜35km未満 18,700円
35km以上〜45km未満 24,400円
45km以上〜55km未満 28,000円
55km以上 31,600円
平均賃金について

解雇予告手当や年次有給休暇を取得した場合の手当、休業補償、災害補償等として、支払われる賃金の計算方法の一つ。

「平均賃金」の計算方法

平均賃金式

※ 上記の算出額が、最低保証金額を下回る場合は、最低保証金額が平均賃金になる
最低保障金額とは、前3ヶ月間の総賃金を前3ヶ月間の総労働日数で除した金額の6割を示す

非常時払い

労働者が、非常の場合の費用に充てる為に、給与支払期日前の支払いを請求した場合、既往の労働に対する賃金を支払う必要があります。
「非常の場合」とは、

(a) 出産、疾病、災害の場合
(b) 労働者又はその収入によって生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合
(c) 労働者又はその収入によって生計を維持する者が、やむを得ない事由により一週間以上帰郷する場合

解雇・退職について

各事案の意味
辞 職 労働者が自ら、労働契約の解約をする場合(自己都合退職)
合意解約 労使双方が合意して、労働契約を解約する場合
期間満了 雇用保険加入者で、1年以内契約期間の終了の場合
雇止め 有期労働契約が3回以上更新、又は1年以上更新時の契約終了の場合
退職勧奨 使用者側から労働者に対して、労働契約の合意解約を申込んでいる状態
解 雇 使用者側の一方的な労働契約を終了させる場合
普通解雇 一般的な解雇(能力・適正等を理由とする等)
整理解雇 経営上の理由による解雇
懲戒解雇 労働者の非違行為に対する懲戒処分としての解雇
諭旨解雇 懲戒解雇にしない代わりに、自主退職を求めるもの(退職勧奨の一種)
解約(契約終了)について
◆ 期間の定めのない雇用 (民法 627条)

労使双方は、いつでも解約の申し入れをすることができます。解約は申し入れの日から2週間を経過して終了することができます。(但し社会通念上の退職マナーとして、1ヶ月前の申し入れが主流です)

※ 期間によって報酬を定めた場合は、次期以降について可能である。但し、申し入れは当期の前半に行う。

※ 6ヶ月以上の期間によって報酬を定めた場合は、解約の申し入れは3ヶ月前とする。

◆ 期間の定めのある雇用 (民法 626条)

雇用の期間が5年(商工業の見習いは10年)を超えた場合、いつでも契約の解除ができます。但し、3ヶ月前に予告します。

解雇のルール
◆ 解雇の予告 (労基法 第20条)

使用者が労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前にその予告をすること。

※ 但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、又は労働者の責に帰すべき事由により(労働基準監督署長の除外認定が必要)解雇する場合においては、この限りでない。

◆ 解雇予告手当(労基法 第20条)

使用者が労働者を解雇しようとする場合に、30日前の予告をしなかった時は、解雇予告手当を必要日数分支払うことによって解決する。

◆ 解雇予告に該当しない場合(労基法 第21条)
  • 日々雇い入れられる者(1ヶ月を超えて引き続き使用する場合は除く)
  • 2ヶ月以内の期間を定めて使用される者(引き続き使用される場合は除く)
  • 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者(引き続き使用される場合は除く)
  • 試の使用期間(14日間)の者
◆ 解雇制限
(a) 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった為、療養の為に休業する期間及びその後30日間は解雇できない。
(b) 産前産後の女性が出産の為休業する期間及びその後30日間は解雇できない。
(c) 国籍・信条・社会的身分、労働組合員であること・加入していること、妊娠・出産・産前産後休業の取得及び育児・介護休業の取得等を理由とした解雇はできない。

※ 「打切補償」を支払う場合は、この限りではない。

◆ 解雇事由の明記

解雇の事由について、就業規則に記載する必要があります。又、労働者の労働契約の際にも、労働条件通知書等の「退職に関する事項」に解雇の事由を明示する必要があります。

退職・解雇時の証明書

[退職証明書]

労働者が退職した時に、「退職証明書」を請求された場合は、雇用主・使用者は遅延なく交付することになっています。但し、この証明書には、労働者が請求しない事項を記入してはいけません。

[解雇理由証明書]

労働者を解雇した時に、「解雇理由証明書」を請求された場合は、雇用主・使用者は遅延なく交付することになっています。

[雇止め理由証明書]

雇止めの予告後あるいは雇止め後、労働者がその理由について証明書を請求された場合は、雇用主・使用者は遅延なく交付することになっています。

労働時間と休日について

◆労働時間法の大原則◆
  • 1日8時間、週40時間労働制
  • 休日は、原則として週1日(週休制の原則)または4週4日
  • 労働時間は、実労働時間で算出する(休憩時間は含まない)

※ “法定○○”と“所定○○”の相違を把握しておく

法定労働時間

(労基法 第32条)

労働時間については、労基法第32条第1項に『休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。』、第32条第2項に『休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。』と決められています。

実労働時間の定義

労働基準法に直接的な規定はないが、法律解釈の問題となる。
最高裁判所の判例として、「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めの如何により決定されるべきものではない。」とあります。

※ 「朝礼」「夕礼」「仮眠」「ミーティング」「清掃」「着替え」「点呼」「体操」等々全て所定時間外での活動において、使用者の指揮命令下(義務付け)がある場合は、実労働時間と判断されている。

※ 「教育」「研修」等に関する時間については、自由参加であれば実労働時間にはあたらない。

◆ 特例措置対象事業場の業種について

商業、映画・演劇業、保健衛生業及び接客娯楽業などのうち、常時10名未満の労働者を使用する事業場(個々の事業場の規模)については、週44時間の特例が設けられている。(※1日8時間制は変わらず)

注意!)1ヶ月単位の変形労働制およびフレックスタイム制は導入可能だが、1年単位の変形労働制は週40時間制。

◆ 労働時間法の例外
(a) 時間外・休日労働
(b) 変形労働時間制(1ヶ月単位/1年単位/1週間単位/フレックスタイム制)
(c) みなし労働時間制(事業場外/専門職/企画職)
(d) 適用除外
(e) 特例

深夜時間の労働

午後10時〜翌午前5時(厚生労働大臣が認可した場合は、午後11時から翌午前6時)までの時間帯に労働させた場合のことをいいます。

※ 深夜時間での労働は、割増賃金を支払う義務がある。

※ 18歳未満の年少者は、深夜労働させることはできない。

法定休日

(労基法 第35条)

法定休日については、『毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。』とあり、変形休日制(就業規則等で明記要)の事業所については、『4週間を通じ4日以上の休日を与える』とされています。

◆ 『休日』について

休日の概念

※ 『所定休日』は、時間外労働(週40時間)を超えないように、会社で決められた休日のこと

振替休日と代休の相違
振替休日 代休
意味 あらかじめ定めてある休日を、事前に手続して他の労働日と交換すること●休日労働にはならない 休日に労働させ、事後に代りの休日を与えることだが、休日労働の事実は変わらず●割増賃金の対象となる
要件 [1]就業規則等に振替休日の規定をする[2]振替日を事前に特定[3]振替日は4週の範囲内[4]遅くとも前日の勤務時間終了までに通知 特になし※但し、制度として行う場合、就業規則等に具体的に記載が必要(代休を付与する条件、賃金の取り扱い等)
賃金 同一週内で振り替えた場合、通常の賃金の支払いでよい。別週で振り替えた結果、週法定労働時間を超えた場合は、時間外労働に対する割増賃金の支払いが必要 休日労働の事実は変わらないので、休日労働に対する割増賃金の支払いが必要代休日について、有給か無給かは、就業規則等の規定による

注意)法定休日以外の休日(土・日休みの場合の土曜日、日・祝休みの場合の祝日)等については、休日労働に該当しないが、当日の労働時間が8時間以内でも週法定労働時間を超えた場合は「時間外労働」となることに注意。

36協定について

法定の労働時間を超えて労働させるものについては、全て時間外労働として見なされます。
又、労働者の過半数を代表する者の署名等で同意を得ている協定書(通称:36協定書)を、労働基準監督署に提出が必要(労基法36条)で、ない場合は時間外の労働をさせてはならない、とされています。

協定で締結することのできる時間外労働数の上限
通常の限度時間 1年単位の変形労働時間制の限度時間 育児・介護法に基づく時間外労働の限度時間
1週間 15時間 14時間
2週間 27時間 25時間
4週間 43時間 40時間
1箇月 45時間 42時間 24時間
2箇月 81時間 75時間
3箇月 120時間 110時間
1年間 360時間 320時間 150時間

※ 1日の時間外労働数の上限はありません。但し、危険有害業務で、法令で定める業務に従事する者の時間外労働の上限は、1日2時間とされています。

◆ 特定付条項での協定締結

年6ヶ月間まで前記の上限を超える時数で締結することができます。
但し、年上限720時間、月上限100時間未満(休日労働含む)、複数月の平均で月80時間以内(休日労働を含む)と定められています。

◆ 特例除外対象業務
  • 工作物の建設等の事業
  • 自動車の運転の業務
  • 新技術・新商品等の研究開発の業務
  • ◎その他厚生労働省労働基準局長の指定する事業又は業務(郵政事業の年末年始業務等)(注意)◎については、1年間の限度制限は対象とする

休憩について

休憩は、労働者の肉体的・精神的な疲労を回復させる目的だけでなく、労働者の集中力を維持して労働災害の防止する点、又社会的・文化的な活動を行うことができるという点でも重要な意義があるとされています。

労基法第34条で定められている休憩時間数
実労働時間 法定休憩時間
6時間以内
6時間超8時間以内 45分以上
8時間超 60分以上

※ 法定内休憩については、無給休憩とすることが殆どだが、法定外休憩時間は、所定休憩(事業所が決めている休憩)については、有給・無給どちらでもよいとされています。

◆ 休憩の与え方3原則
  • 一斉に与えること
  • 労働時間の途中に与えること
  • 自由に利用させること

※ 「一斉休憩の原則」に該当しない場合があります。

法で適用除外されている業種(運輸交通業、商業、接客娯楽業、金融業等)、又それ以外の業種で労使協定が締結されている場合は「一斉休憩の原則」が適用除外となります。

有給休暇などについて

有給休暇と無給休暇の2種類(就業規則で記載)

有給休暇
◆ 年次有給休暇 (労基法 39条)
  • 入社後6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に付与
  • 年休権(有効期限)は、2年間である
  • 使用者側に時季変更権がある(労働者の退職時にはなし)
  • 年休の買い取りは禁止(年休付与の意義に反する)
  • 計画年休の取得は、年休5日を超える日数について適用可能
  • 2019年4月より『年5日の年次有給休暇の確実な取得』の義務が事業所側に発生(年10日以上の年次有給休暇が付与された労働者に対して)
◆ 法定で定められている基本付与日数

(1)常勤労働者及びパートタイマー
(所定労働日数が週5日以上、年間217日以上の者、週所定労働時間が30時間以上の者)

継続勤務
年数
6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

(2)(1)以外の労働者

週所定労働
日数
1年間の所定労働日数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
4日 169日〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
◆ その他有給休暇は、会社が決定できるもの

慶弔休暇・生理休暇・育児休暇・介護休暇・リフレッシュ休暇等を有給にしている会社もある

その他事項

母子保護に関する事項

産前産後の保護

使用者は、産前6週間(多胎妊婦14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、及び産後8週間を経過しない女性(6週間を超えた女性が請求し、医師の許可がある場合を除く)を就業させることができない。
又、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務へ転換する必要がある。

妊産婦の就業

妊産婦が請求した場合、変形労働時間制等を採用している場合も、1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならない。
又、妊産婦の請求があれば、時間外、休日労働、深夜労働もさせてはならない。

育児時間(労基法67条)

生後1年に満たない生児を育てる女性は、休憩時間の他、1日2回少なくとも30分、育児の為の時間を請求することができる。

※ 4時間以内のパートタイマーの女性には、1日1回30分の育児時間を与えればよいとされている。

生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置(労基法第68条)

生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した時は、生理日に就業させてはならない

年少者の保護について

年少者の雇用

使用者は、満15歳に達した日以降の最初の3月31日までの児童を、労働者として使用できない。
満18歳未満の年少者を雇用する場合、その年齢証明書を事業所に備え付けなければならない。

未成年者との労働契約

未成年者(満20歳未満の者)を雇用する場合、法定代理人(親権者及び後見人)の同意が必要とされる。(民法5条)

法定代理人が未成年者に代わって、労働契約を締結してはならない。但し、労働契約が未成年にとって不利なものである場合は、将来に向かって解除することはできる。
法定代理人は未成年者に代わって、賃金を受け取ってはならない。

◆ 年少者保護について

満18歳未満の年少者について、変形労働時間制や時間外労働、休日労働、深夜労働は原則適用されない。但し、例外規定もある。
又、修学中の者については、修学時間も労働時間として組み入れてカウントする。
危険有害業務、坑内業務で労働させてはならない。

育児・介護休業について

育児休業制度

満1歳未満の子を養育する男女労働者に適用され、申し出(1ヶ月前)をすれば、原則として子が生まれてから1歳の誕生日の前日までの間で希望する期間を休業することができる制度。(一定条件で1歳6ヶ月まで可能となる)

※ 日々雇い入れる者は対象外。
※ 同一事業主に、引き続き雇用された期間が1年以上であること、子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用される見込みがある場合。

介護休業制度

要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者に適用され、申し出(2週間前)をすれば、対象家族1名につき、常時介護を必要とする状態ごとに1回、通算してのべ93日間の介護休業することができる制度。

[要介護状態]

負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう。

[対象家族]

配偶者、父母、子、配偶者の父母、並びに労働者が同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫をいう。

※ 日々雇い入れる者は対象外。
※ 同一事業主に、引き続き雇用された期間が1年以上であること、介護休業開始日から起算して93日を経過する日を超えて引き続き雇用される見込みがある場合。

子の看護休暇

小学校就学前の子を養育する労働者が申し出ることにより、疾病・怪我をした子の看護の為に、1年に5回まで休暇を取得することができる。

※ 勤続6ヶ月未満の労働者、週2日以内の所定労働者は、労使協定により対象外とすることができる。

労働時間制限制度

◆ 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者がその子を養育するために請求した場合、又は要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその対象家族を介護するために請求した場合において、

(1) 時間外労働の制限時間(1ヶ月24時間、1年150時間)を超えて労働時間を延長してはならない。

(2) 深夜労働をさせてはならない。

労働時間短縮等の措置

◆ 使用者は、1歳(又は1歳6ヶ月)未満の子を養育する労働者で育児休業をしない者に関しては次の措置のいずれかを、1歳(又は1歳6ヶ月)以上3歳未満の子を養育する労働者に関しては育児休業に準ずる措置又は次の措置のいずれかを講ずる義務を負う。

(a) 短時間勤務の制度化
(b) フレックスタイム制
(c) 始業・終業時間の繰上げ・繰下げ
(d) 所定外労働をさせない制度
(e) 託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与

◆ 使用者は、常時介護を要する対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く)に関して、対象家族1人につき1要介護状態ごとに連続する93日(介護休業した期間及び別の要介護状態で介護休業等をした期間があれば、それとあわせて93日)以上の期間における次の措置のいずれかを講ずる義務を負う。

(a) 短時間勤務の制度化
(b) フレックスタイム制
(c) 始業・終業時間の繰上げ・繰下げ
(d) 労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度

安全と衛生に関する事項

労働安全衛生法

労働基準法(第42条)の姉妹法として、使用者が遵守すべき安全衛生の最低基準を定めるとともに、労働災害防止の為に総合的な法規制を行い、職場における労働者の安全と健康を確保して快適な職場環境の形成を促進する法律。

◆ 安全衛生教育

事業者は、労働者を雇い入れた時は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生の為の教育を行なわなければならない。

◆ 作業の管理

事業者は、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するよう努めなければならない。

◆ 健康診断

[一般健康診断]

事業者は労働者に対し、医師による雇入れ時と年1回の定期健康診断を行なわなければならず、その結果を労働者に通知しなければならない。

[特殊健康診断]

特殊な有害業務に常時使用する労働者に必要。

※ 事業主は、健康診断の結果の守秘義務があり、違反者は6ヶ月以下の懲役、50万円以下の罰金刑。

休業補償
(a) 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合に、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
(b) 使用者は、労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合は、労働者の療養中平均賃金の60%の休業補償を行わなければならない。
(c) 業務上死亡した場合は、遺族に対して平均賃金の1,000日分の遺族補償をしなければならない。同意があれば6年の分割補償とすることもできる。
労働者災害補償保険法(労災保険法)

業務上の災害や通勤災害に対して、政府が運営する保険から補償をする制度であり、事業主が、取扱い業種に適当な保険料を毎年支払うことによって加入となる。

◆ 「業務上」の行政解釈
(a) 災害が使用者の支配・管理下で発生したこと(業務遂行上)
(b) その業務に内在する危険が現実化したと評価できること(業務起因性)
◆ 「通勤災害」の解釈
(a) 就業に関して
(b) 住居と就業場所との間で
(c) 合理的な経路及び方法によって往復する

時に、災害にあった場合をいう。

社内書類整備

労働者名簿

事業場ごとに、各労働者についての労働者名簿を調製しなくてはならない。

賃金台帳

事業場ごとに、労基法108条に記述されている事項を記入した賃金台帳を調製しなくてはならない。