「マーケティング(3)〜ニーズ・ウォンツ〜」の続きとして、「誰に」であるお客さんの「ニーズ」と「ウォンツ」を、さらに深く考えていきます。
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ニーズの深掘りとインサイト
潜在的な「ニーズ」「ウォンツ」のみの理解だけでは、ライバルとなる他者も同じように探り、考えることができます。
一般的なリサーチ(例えば、アンケートや定性調査など)による「ニーズ」の把握では、似たようなプロダクトになる傾向があります。
モノやサービスが溢れている世の中です。
顕在的な「ニーズ」のみならず、人の潜在的な「ニーズ」を洞察する力「インサイト」(コンシューマー・インサイト)が必要とされるという時代背景であることは事実です。
人の「ニーズ」に関連する心理、消費者行動なども含め理解することが、より「ニーズ」「ウォンツ」を幅広く探ることができるのではないかと考えます。
前回の「マーケティング(3)〜ニーズ・ウォンツ〜」の後半での Why → How → What の流れが見えてきました。
その Why に大きく関与するものです。
個人や集団が製品及び価値の想像と交換を通じて、
そのニーズやウォンツを満たす
社会的・管理的プロセスである。
「ニーズ」「ウォンツ」を満たすことの真の意味を理解し、「価値」というものを創造するキッカケになればと考えます。
ニーズは人類共通の欲求である
その欲求とは何でしょう?
「欲求」とインターネットで調べれば、色々な欲求名称が出てきます。
人間の生活の中で満たそうとする欲求は、常に複合的です。
※学者ではないので、個人的解釈での解説です。
分かりやすい例えとして、人間に、睡眠欲・食欲・性欲があると言うのは知るところです。
これは人間に限らず、動物界に存在する欲求で「基本的欲求(生得的な欲求)」のカテゴリーに入ります。
では、それだけを満たせばいいのでしょうか?
寝ることが出来れば、どこでもいいのですか?
食べることが出来れば、何でもいいのですか?
性欲を満たされれば、どんな人でもどんな状況でもいいのですか?
「寝心地のいい場所で寝たい」「明るいところで寝たい」「美味しいもの、好きな物を食べたい」「素敵なお店で食べたい」「自分の好みによって、満たされたい」
このように、「個人的欲求」が加わります。
それ以外にも、
「人に認められたい」「奇麗になりたい」「地位、名誉が欲しい」「事業に成功したい」「いい家庭をもちたい」「旅行を沢山したい」
これらは「社会的欲求」と言われるものです。
これらの個人的欲求が社会的欲求に含まれる場合もあります。
その場合の「社会的欲求」は、「困った人を助けてあげたい」「誰かの役に立ち合い」「社会の問題を解決したい」「環境を良くしたい」「さらに生活が便利になるよう研究したい」など、社会・他者に対しての行為動機が該当します。
「基本的欲求」「個人的欲求」「社会的欲求」は、個々人の特性や生活環境の違いで満足度は違いますが、欲求レベルは年齢や満足度などで変化します。
それを表現しているのが、世界的に有名な「マズローの欲求階層理論」です。これについて、別ページで説明しています。
それよりも次記の理論を理解してもらう方が、ビジネスにおける「ニーズ」「ウォンツ」の把握に役立つと思います。
消費行動因子と感情円環モデル
人間には、多種多様の欲求があります。が、あるように見えて、ある程度の分類付けができます。
それは先ず、感情(情緒・情動)という分野です。
快・不快
人間の消費行動(ここでは、単純にお金をどう使う動機)として、2通りの感情型で行動します。
それが、「不快解消型」と「快楽探求型」です。
「不快解消型」は、
生活の中での不安なこと、苦痛なことから、「解放・解消」されたいという欲求が生じるということ。
「快楽探求型」 は、
喜びたい、楽しみたい、満足したい、という「獲得欲」が生じるということ。
そして、「快楽探求型」よりも「不快解消型」の欲求の方が強いということ。つまり、消費行動として「快楽探求型」よりも「不快解消型」にお金を支払ってしまうことになります。
これは、重要なポイントです。
例えば、どんなに楽しみにしている遊園地行きだったとしても、身体の激痛、発熱、怪我、あるいは家族・友人の病院搬送の連絡など、不安や不快になる状況があれば、その解消・解決の方が快楽より先であるということで、行動を移します。
それは、別の理論でも説明できます。
不安が安心に。苦痛が安楽に。
ということは、不快・苦痛の感情から、安心・安楽という快楽感情になる、その感情移動距離が大きいために、快楽度合いが増すということが言えます。
次のようなイメージです。
平穏の状態から、快楽を獲得したとしても、高揚は一時的で、当然平穏に近い状態に戻ります。苦痛からは、平穏の状態に戻そうとするわけですが、それが快楽になります。
この時の感情の移動距離は、苦痛の度合いにもよると思いますが、3倍とも10倍とも言われています。
苦痛を “谷間に落ちた状態” と考えれば、元の位置に戻る状況と、快楽を獲得した後、高揚度が下がる状況とで比較しても、感情の移動距離の差は歴然としているでしょう。
(その距離を数字に表現することはできませんが、心理的なものです。)
不安要素に対する対策なども同様です。
非難用具を準備するとか、定期検診を受けるとか、保険に加入するとか。
優先順位として、快楽獲得より、苦痛解消にお金をかけやすいということです。
ただし、不安から逃避している人が多いのも事実。そのような人は、目先の快楽を追い続けているという状態です。
このようなことを考えると、人間がどのような状態の時に、消費行動を起こすのかが見えてきます。
人間は、「不快と快楽」という感情を持っていますが、ご存知の通り、もっと細かい感情を保有しています。
それがどんな感情なのかを、具体的に示しているのが、次のテーマです。
ラッセルの感情円環モデル
次の図を見て頂くと、すぐにお分かり頂けると思います。
これは「快と不快」の他に、「覚醒と眠気」という感情を組み合わせ、各々の感情を4つの分類に分けたモデル図です。
これをどのように活用するかどうか、是非考えてみて下さい。
参考:
その不快の感情はどんな時に生じるのか、そしてそれを解消するとどんな感情に近づくのか‥‥では、その解消する方法とは、どんなことが考えられるか‥‥
まとめ
ここで説明させて頂いたことを踏まえ、お客さんが求めている「ニーズ」「ウォンツ」に対する供給側のやるべきことは、ただ、具体的な欲求・欲望自体を満たすことだけではなく、そこに隠されている感情をより「快」に近づけることです。
すると、「ニーズ」「ウォンツ」に対するプロダクト制作だけではなく、感情を「快」にするようなプロダクト制作も考えることになります。
それによって制作された「プロダクト」には「価値」が生じます。
その「価値」とは何か?‥‥「プロダクト企画」(1)で考えていきます。