マズローの欲求階層理論とマーケティング
マーケティングにおいて行なわなければならないのが、リサーチです。
そこに関わる要素が「ニーズ・ウォンツ」(詳細)で、ヒト科(人)が時代を超えても備え持つ欲求・欲望を知っておくことは損になりません。
ご存知のように、ヒト科(人)には色々な欲求があります。
- 美味しいものを食べたい
- ゲームが欲しい
- 金持ちになりたい
- のんびり暮らしたい
- 認められたい
- 事業に成功したい
- 異性にモテたい
など。食欲・性欲・金欲・物欲・承認欲……多種多様です。
これらの欲求があることで行動する “動機” が生じ、経済活動は生じています。何千年もの間、経済活動は止まることなく、人口増と共に拡大してきました。
産まれてから死ぬまで欲求・欲望が動機となり、人は生活・行動をすることになります。
人々が歳を取り、経験や知識を増やしていくからこそ、マーケティングは継続する必要があり、そのためにも基本的な「ニーズ・ウォンツ」を把握することは必至です。
人の欲求=ニーズに関する基本的なこととして、代表理論の一つをご紹介します。
アメリカの心理学者アブラハム・マズローさんの有名な「欲求階層理論」です。
マズローの欲求階層理論
アブラハム・マズロー(Abraham Harold Maslow)さんは、人間の欲求を低次から高次の順で分類し、欲求カテゴリーを階層(ヒエラルキー)によって示しました。
※マズローの欲求階層理論にはさまざまの批評はありますが、これがベースとなり心理学や動機づけの理論を進展させたという評価もあります。
『人間は自己実現に向かって絶えず成長する』と仮定したマズローの欲求階層理論(Maslow’s hierarchy of needs)は、『自己実現理論』とも称されています。
ニーズ(欲求)を人の行動にひもづく “動機” と考えれば、「人は何を求めているのか?」「人は何を満たしたいのか?」「人は何が満たされていないのか?」「人は何を……?」を探ることでビジネスに繋がると考えることができます。
欲求階層の概略
一般的な説明では、5階層がメインです。ここでは、マズローの晩年に提唱した6階層に基づき触れていきます。
マズローによって階層化(ヒエラルキー化)された欲求とは、「生物的・生理的欲求」「安全欲求」「社会欲求」「承認欲求・自尊欲求」「自己実現欲求」、そして後に6階層目としてプラスされた「自己超越欲求」です。
この欲求階層(上図)は、下から上へと順に高次欲求となり、低次の欲求がある程度満たされれば、高次の欲求へ移行すると言われています。
高次欲求と低次欲求が混在されて、人は日々の生活を送るとされています。
個人個人の活動内容を欲求割合で考えた時、より高次欲求を求めていないとしたら、常に低次欲求を充足しようと行動していることになります。
社会的環境(ネット上の繋がる状態)から遠のき物質的欲求を充足させることで納得できる生活の場合、低次欲求と同じくらい、自尊欲求も充実させているパターンなのかもしれません。
欲求階層の各欲求について
(wikipediaなどを参考)
【1】生物的・生理的欲求(Physiological needs)
人間の生命維持のための欲求。空気、水、食事、睡眠、健康、排泄、性、衣類などの生得(本能)的・根源的な欲求。
“空気” は余程のこと(事件・事故)がない限り、普通に呼吸ができるため欲求と感じることはありません。
“水” “食事” は、渇きや飢えに対して生じる欲求であるため、「ジュースを飲みたい」「美味しいものを食べたい」などは、生理的欲求には該当しません。
※この理論への批判的意見の一つは、“性(Sex)” がこの階層にあること。
メモ
健康な人間であれば、満たされやすい欲求とされている。モチベーションの維持または向上させていくために、該当するものの不足による不快感を回避する能力につながる。
そのため短絡的な欲求要素とも言える。
例えば、どんなに空腹であっても満腹になれば食欲は失せるように、常態的な欲求ではない。
【2】安全欲求(Safety needs)
安全かつ経済的安定を望む欲求。良い健康状態の維持、事故・事件防止、労働保障、保険、セーフティネットの強化など、安心して生活できる環境を得ようとする欲求。
メモ
誰にも脅かされることなく、脅威や危険な要素から回避されたいというもの。風雨・天災をしのぐための住居、戦争・テロなどのない環境で過ごしたいという欲求まで含まれる。
住む国などでも違うが、日本でも震災や洪水などで避難所生活、車中生活などが続くと安らぎのある環境が欲しくなり、満たされないとストレス増、暴力的、鬱状態になることも。
【3】愛情欲求(所属欲求・社会的欲求)(Social needs / Love and belonging)
情緒的な人間関係の構築、心地の良い集団に属したり、他人から評価されたり愛情を得たいという欲求。
生理的欲求や安全欲求などの個人的な生存欲求から、他者との関係性(繋がり)における欲求が現れる。
メモ
不適応や重度の病理、孤独感や社会的不安、鬱状態になる原因の最たるもの。
例えば、いじめに加担する(または注意しない)人たち、不良少年たち、暴走族の一員などの心理は、この所属欲求が反映されたもの。
自己啓発セミナーへの頻繁な参加、新興宗教への入信なども同様とされている。
【4】尊重欲求・承認欲求(Esteem)
他者から、独立した個人として認められ、価値ある存在、尊重されたいという欲求。
尊重のレベルには二つ。
低いレベルの尊重欲求は、他人からの尊敬、地位への渇望、名声、利権、注目等を得ることによって満たすことができる。
(マズローは、この低い尊重のレベルにとどまり続けることは危険だとしています。)
高いレベルの尊重欲求は、自己尊重感、能力や技術等の習得、自己信頼感、自立性等を得ることで満たされ、他人からの評価よりも、自分自身の評価(自尊心)が重視される。
(この欲求が妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じます。)
メモ
自己肯定感、自己効力感、有能性などに関連する欲求であり、モチベーション向上にもつながる。
逆に、自身に価値がないと思い込んでしまう場合、孤独感や鬱状態に陥る。
【5】自己実現欲求(Self-actualization)
自分自身の持っている能力・可能性を最大限に引き出し、創造的活動をしたい、目標を達成したい、自己成長したいという欲求。
自分がなりえるものにならなければならないという欲求であり、全ての行動の動機が、この欲求に帰結されるようになる。
メモ
下位の欲求を満たさなくても、高い目標や人生の目的、ビジョンなどを持ち、行動することもできる。
これまでの5つの欲求を満たした方は、次の特徴が見られるとされています。
- 現実をより有効に知覚し、より快適な関係を保つ
- 自己、他者、自然に対する受容
- 自発性、単純さ、自然さ
- 課題中心的
- プライバシーの欲求からの超越
- 文化と環境からの独立、能動的人間、自律性
- 認識が絶えず新鮮である
- 至高なものに触れる神秘的体験がある
- 共同社会感情
- 対人関係において心が広くて深い
- 民主主義的な性格構造
- 手段と目的、善悪の判断の区別
- 哲学的で悪意のないユーモアセンス
- 創造性
- 文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越
【6】自己超越の欲求(self-transcendence)
自己実現欲求のさらに高次元にあるとされている欲求。
自己超越者には次の特徴が見られるようです。
- 「在ること」(Being)の世界について、よく知っている
- 「在ること」(Being)のレベルにおいて生きている
- 統合された意識を持つ
- 落ち着いていて、瞑想的な認知をする
- 深い洞察を得た経験が、今までにある
- 他者の不幸に罪悪感を抱く
- 創造的である
- 謙虚である
- 聡明である
- 多視点的な思考ができる
- 外見は普通である(very normal on the outside)
ビジネスとして考えてみると、各欲求は全ての人が共通として備えていることになりますから、マーケティングにおけるリサーチやインサイトを含め、これらをヒントとしてニーズを満たすための対応を実行することは、自然の成り行きです。
これだけではマーケティングとして成果は上がりませんが、これらをいかに活かすのか、各々が模索していきます。
また、ターゲティングをする場合に、ある程度の生活レベル(水準)も参考になるでしょう。