※2013年7月15日の記事のリライトです。
アパレルファッション系や雑貨系、食品系などの店舗を個人事業者として「やりたい!」という方もいるでしょう。その方法には、全て自らの資金と計画で準備する(自分のお店を持つ)方法、フランチャイズ店舗オーナーになる方法などがありますが、資金の問題などを考えると躊躇してしまうのも仕方がありません。そこで自らの体験をもとに『販売代行』というビジネスモデルをまとめてみました。
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販売代行とは?
アパレル・ファッション業界には『販売代行』という業務委託システムがあります。
日々の店舗運営を、外部会社または個人事業者に委託するシステム(ビジネスモデル)です。
一般的な “アウトソーシング” (外部委託)業態の一つになります。
接客販売・レジ・陳列・入荷・バックヤード業務・イベント対応、さらに本部(=契約するメーカーなど)への売上報告・日報・月報や販売スタッフの採用・教育・人事労務管理まで、店舗運営に関する全業務を遂行することになります。
上図のように『販売代行』ビジネスの仕組みは、基本的に店舗(テナント・ショップ)設営、商品準備などの経営的リソースは全てメーカー(または商社)であり、店舗内運営に関わる業務全般を他の会社・個人事業者に任せる分業スタイルと言えます。
つまり、経営者の立場として店舗業務運営の責任を負うことになります。
プロの販売代行業者や委託契約内容によっては、地域性・客層・近隣店舗などを分析した上で、本部へ商品の仕入れについて種類・数量など要望することもあります。通常は、本部のスーパーバイザー担当や専門部署が分析した上で、店舗へ商品を送る段取りをしています。
販売代行とフランチャイズとの違い
販売代行ビジネスよりも一般人に知られているのが『フランチャイズ』というビジネスモデルです。傍から見れば似ていますが、仕組みと契約そのものが別物です。
フランチャイズはコンビニエンスストアや珈琲店、焼き鳥などの移動販売店、居酒屋などで有名な仕組みですから、ご存知の方も多いでしょう。
特徴は商標・商号を使用できる権利があること、販売独占権があることです。自分の土地に建物を造り、看板を掲げてお店を運営することができます。
『販売代行』ビジネスは、店舗そのものがメーカー所有物ですから、商標・商号を勝手に使うことは許されておらず、販売独占権ではなく販売業務を代わりに行うことになります。
もう一つ大きな特徴は、お金(手数料)の流れです。フランチャイズ契約は商標・商号の使用料、いわゆる看板料などの手数料をメーカーに支払うことになりますが、販売代行は店舗売上に対する手数料をメーカーからもらえる流れです。
手数料に関しては、後ほど説明します。
販売代行ビジネスとアパレル業界
日本国内には200以上の百貨店と、2400以上の総合スーパー(ゼネラルマーチャンダイズストア)やショッピングセンター(イオン、イトーヨーカドー、西友など衣食住揃った施設)があります。
さらには、6600以上の衣料品専門店(ユニクロ、しまむら、西松屋など)などが存在し、他の衣料品店などを含めれば、全国に何万店とあるのでしょう。(*2019年頃の情報をもとに記載しています)
ということは、販売スタッフ(販売員、店舗に関わる労働者含む)も相当な人数が働いているということになります。
ただ、Webショッピング(楽天市場、ZOZOTOWNなど)の台頭もあり、激変の時代です。アパレルメーカー倒産や日本からの撤退、店舗多数閉店などは珍しくありません。
店舗寿命が短命化してきているのは事実。
新規開店する際は販売スタッフを新規採用しますが、閉店するたびに解雇しなければならない労働問題もリスクです。同時にファッション系の販売職を希望する人が年々減少しているため、現業にも課題山積なのは致し方ありません。ショップ運営に関わる労働問題にフォーカスしてみました。
大型モールなどの競争激化
そんな背景の中、21世期から規模を拡大してきたアウトレットモールという業態と、大型ショッピングモールという業態。
アウトレットモール業の2大勢力は、三菱地所・サイモン株式会社(元チェルシージャパン)のプレミアム・アウトレットと、三井不動産株式会社の三井アウトレットパーク(MOP)です。
三菱系と三井系とが競合(当初は三菱系と三井系のターゲット路線は違っていたが、三井系がライバル意識が強くなり対峙・・・という私釈)しながら、相乗効果を作っているのも事実です。
プレミアムアウトレット系列
三井アウトレット系列
百貨店が厳しくなったのも、アウトレットショップ繁栄が要因とも言われていましたが、メーカーまたは商社(伊藤忠商事、三菱商事、ワールドなど)側の立場からすれば、売上・利益が得られればどちらでもいいはずです。
アウトレットモールがメジャーになってきた頃、イオングループも本格的に参入してきます。2011年埼玉県越谷市のレイクタウンアウトレット、そして2018年広島県広島市のジアウトレットヒロシマ:THE OUTLETS HIROSHIMAは巨大モールとして有名になりました。
レイクタウンアウトレット
ジアウトレットヒロシマ
当然、衣料品専門店のユニクロやしまむら、ハニーズ等も販売チャネルを強化してきたことでシェアの奪い合いが激化しています。さらに通販部門に予算を注ぎ込み始めたメーカーも増加し、店舗運営に対する経営判断は年々厳しくなってきているように感じます。
ショップ運営の課題
アウトレットモールや大型ショッピングモール出店の課題は、初期から多々ありました。その一つが、運営サイドと現場サイドのギャップ(歪み)です。
ご存知のようにアウトレットモールなどは、都市圏内よりも郊外型が主流です。広い敷地を求めていますから、地方・田舎での立地になります。
その結果として、モールで働くことになる販売スタッフなどに関する課題点は、頭を抱えるほどでした。
主な問題を3つあげてみます。
- 働く人がいるのか?(人数的な問題)
- 販売スキルはどうか?(販売経験者が少数)
- メーカーサイドの管理(本店・支店から遠い)
古いモールになりつつある関東郊外型で大型モールと言えば、御殿場や軽井沢のアウトレットモールです。
オープン当時、東京圏または他地域の店舗から御殿場、軽井沢などに引越し、地元に住み込み働いている店長もいました。移住を嫌う店長やマネージャーは、毎朝1時間半から2時間かけて御殿場や軽井沢まで通勤。知る限り、遠い人は横浜から御殿場まで車通勤、東京から軽井沢まで新幹線通勤という方々も‥‥。
とは言うものの、販売スタッフの殆どは地場採用です。オープン時は “アパレル販売職未経験の店長” というショップも少なくありませんでした。
関西の郊外型モールと言えば、神戸三田や泉佐野のアウトレット、滋賀竜王などは通勤手段の課題も重なり販売スタッフの確保に苦労していました。
メーカー側としては新人教育、労務管理が大変であることがお分かりでしょう。
その解決策の一つとして、メーカーや商社が選んだ手段の一つとして、日々の店舗運営を任せる(委託する)『販売代行』というシステムです。簡単に言えば、下請け業者に依頼するようなイメージです。
販売代行システム(ビジネスモデル)を導入している割合は、百貨店より郊外型アウトレットモールの方が多く、店舗数の約2割以上は販売代行業者にて運営している状況ではないでしょうか。
その一つの目安は、店舗の求人内容です。メーカー名や商社名とは違う社名で求人を掲載していたら、販売代行業者である可能性は高いです。
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販売代行によるメーカー側のメリット
次の2つの図は、メーカー側にとって主なメリットになるものです。
商社はこのことを踏まえ、販売代行システムをよく活用しています。
メーカー側にとってメリットになることは、委託された販売代行業者にとってもメリットに繋がります。店舗(ショップ)の売上額に対する歩合(率など)での報酬を、メーカー側(発注者)から貰うことができます。
つまり、テナントを準備して家賃を払って、商品を仕入れて在庫を抱えるような自店舗運営のようなリスキーさはなく、“売上をあげる” ことに注力することができます。
販売代行業者のメリットは報酬
報酬の決め方について >>
月単位の店舗売上が500万円だったとして、契約上の報酬率(歩合率)が20%の場合、100万円をメーカー(発注者)から頂戴します。
※20%の歩合契約を取るのは・・・正直、厳しいです。
アウトレットモール、百貨店、ファッションビル、路面店、大型ショッピングモールなどの環境、市場条件などで報酬率(歩合率)は変動しますが、おおよそ10%〜20%の間、アウトレットモールなら、10%〜15%前後、百貨店、路面店、大型モールなら、12%〜20%前後が主流でしょうか。強気のファストファッションメーカーでは、歩合8%〜9%という情報もありました。※2012年頃の情報をもとに
報酬の決め方は、店舗売上の見込み額(あるいは売上実績)が基準ですが、複数方法あるため交渉次第です。
報酬に影響する売上
郊外型アウトレットモールなどの施設の場合、立地条件やリーシング(=どのブランドメーカーをどの区画に配置するのか折衝、調整すること)内容にも左右されますが、ディベロッパー(=モール運営管理会社)の努力もあり、それなりの集客が見込めます。店舗側で集客する力が小さくても、売上額が増える傾向にあります。
ただし、購買意欲をそそるディスプレイ、品揃え、価格、タイムセールなどの戦術は店舗側の努力です。
また、各モールに集う(購買意欲のある)客層の違いにより、客単価(一人当たりの購入金額)に差が生じています。丁寧な接客で客単価をアップするのか、客単価は低くても購買客数を増やすのか、売上アップ戦略も必要です。
さらに、都市圏と地方でも売上額の差は生じます。
(察知できた人もいると思いますが、)メーカーのブランド力と商品力、そしてトレンド系で売上の良いメーカーショップは、販売代行業者にとっても魅力があるということになります。
そして店舗運営なら当たり前ですが、季節に応じた集客などで利益は左右されます。
年間を通して考えると、春・夏・秋・冬の季節のセール(スプリングセール、サマーセールなど)、クリスマスセール、その他年末年始やボーナス時季、大型連休に向けた〇〇商戦などが催事(イベント)としてありますから、売上の良い月と悪い月の差が大きいのは想定できます。
特段、大型モールなどの新設・増設、店舗新規開店の時は、オープン景気という特需があります。オープンセールを狙うお客が一気に集中する絶好の時機です。開店から数ヶ月で1年間の予想利益を得た販売代行業者もいるほどで、先ず1年間は安泰ということも稀にあります。
販売代行ビジネスとしては、年間単位で損益(利益と損)を考えていきます。年間で経営プラン以上の粗利が出れば、販売代行業者として良い店舗になるでしょう。
自社で店舗を準備する(高額な先行投資をする)必要もなく、メーカーブランドの知名度があれば、一から集客するコストも不要です。“販売行為” “店舗運営業務” に注力(フォーカス)できるのは、販売代行業者として大きなメリットになります。
販売代行システムのデメリット
メーカー・商社(委託)側のデメリット
- 売上予実の誤算で外注費が高くなる
- 安かろう悪かろうの販売代行業者によってブランドイメージが損なわれる
- 販売スタッフの帰属意識が薄く、定着が悪いため顧客も流動的、売上も安定しない
販売代行業者(受託)側のデメリット
- 売上が悪い場合、報酬が下がり赤字になる月もある
- 販売スタッフの教育に労力が必要
- メーカー側との交渉で劣勢になる
- 契約更新されない可能性もある
- メーカー自店を優先される
販売代行業者として、双方のデメリットを知った上でメリットを与えられるような関係性を継続することが、契約継続につながっていきます。
店舗運営として大切な要素である販売スタッフの教育メソッドなどを強みとする販売代行業者であれば、メーカーブランドのイメージを維持することも責務と捉え、帰属意識が高まり、かつ売上も伸びれば、双方ともにメリットへ転じます。
デメリットをメリットに変える努力は必須です。
それでも、ビジネスである以上リスクは付きものです。
付きまとう雇用リスク
店舗(ショップ)運営は、日々シフトで運営していく上で、販売スタッフを雇い続ける必要があります。
つまり、メーカー直営店であっても販売代行業者であっても、人件労務費は必要です。(人件労務費とは、賃金・賞与・各種手当・保険料・有給などの福利厚生費・採用費・教育費など従業員に関するコスト)
※さらに詳しいことは、「アパレル販売代行を行なってみたい方」にて確認できます。
メーカー側はこれを「雇用リスク」と捉えた場合、売上がそれほど期待できなさそうな市場(ディベロッパーとの関係性を保持するための付き合い上の出店など)であれば、直接雇用を避け、外部の会社に任せてリスク回避をはかります。さらに、巡店などを行う経費、販売スタッフのケアなどの管理コストも削減できると考えるでしょう。
販売代行業者にとってもリスクですが “負うべきリスク” として抱え、経営戦略の範囲で賄っていきます。新規交渉する際もこの雇用リスクを材料に、販売代行契約へと結びつけます。
当然売上が悪ければ報酬額は減りますので、毎月経費となる人件労務費などの支出額を差し引くと、赤字になる月もあるのは仕方がありません。これは販売代行業者側のデメリットの一つです。
もちろん、年間で赤字になる場合もあります。
年間売上が計画より下振れた場合などの要因がありますが、ポイントは最初の契約時の商談に甘さがある可能性は否定できません。
商談時の契約リスク
メーカーや商社側の担当者は、販売代行業者への報酬額を安くさせようと、上目線で、かつ強気の態度がほとんどです。商談、交渉する際の有利性・優位性はメーカーや商社側にあるからです。
これもデメリットの一つになります。
販売代行業者同士(ライバルと)の熾烈な交渉合戦が生じた時、ライバルとの競争に勝つために企画内容の中身よりも、安易に “報酬率” で競争しあったり、メーカーや商社側の担当者が “安価な販売代行業者と契約する” という低レベルな基準があったりしますから、注意が必要です。
安い報酬率で契約してしまった結果、年間売上額が計画より下振れ、報酬額が少なくなり、赤字になる可能性はゼロ%ではありません。
それらを回避するためにも、契約前の商談においては情報収集による企画提案力が必要になってきます。
その大切な情報の一つとして、店舗の年間売上予想があります。売上予想から報酬率(歩合率)を決めていくことが多いからです。
その際、メーカー側が提示してくる予想された売上計画は鵜呑みにしないことです。特に、新規アウトレットモールで初進出初出店となると、メーカー側に過去の売上データはありませんから、希望的観測での売上予想額を提示してくるでしょう。
その情報が適正かどうか、自らのリサーチの中で判断します。メーカーサイドの近隣他店の売上状況、人気度や顧客層などのリサーチは必要ですし、トレンドなども把握しておく必要もあります。
思い込みで売上が期待できることを理由に報酬率を下げて契約すると、‥‥後々泣きを見るのは販売代行業者です。売上が今一歩微妙なメーカーショップになると、販売代行業者のメリットは乏しくなります。
逆に店舗売上が想定以上に好調だった場合、報酬額も高くなります。
つまり外注費がメーカー側にとって想定を覆すような高額コストになることも有り得るわけです。自社運用より高額な外注費となれば、メーカー側にとってデメリットに変わりますから、契約更新する際の交渉も重要になってきますので、良い関係性を作っておく努力も必要です。
メーカー・ブランドの選び方も重要
勿論、そんなことは既存の販売代行業者も理解していますので、より競争が激しくなります。その競争に勝ち、契約を取るためには、頭脳的戦術が必要なのでしょう。
さて、もう一つの課題。 ・・・続く・・・