シュンペーター的「リーダーシップ」

Joseph_Schumpeterリーダーシップ論で必ず出てくる経済学者である巨匠シュンペーター(Schumpeter)。彼のリーダーシップ論は、創造的破壊(Creative Destruction)が付いて回ります。「行なうは難し」なのですが、共感できるものです。彼のリーダーシップ概念は、一言なら起業家(アントレプレナー。直訳は企業家ですが、私釈は起業家的思考者)であり、そこにはイノベーション(創造的構築)がポイントになるものです。
ヨーゼフ・アーロイス・シュンペーター/Joseph Alois Schumpeter
(画像出典:Wikipediaより)

ピーター・ドラッカーは、「21世紀はシュンペーターの正しさが証明される」と言っているほど、シュンペーターの良き理解者です。(ドラッカーの実践経営哲学より)

市場経済理論には均衡を前提とする欠陥がある。イノベーションどころか変化さえ扱えない。1911年にシュンペーターが明らかにしたように、
経済活動の現実は創造的破壊による動的な不均衡である。

(「ネクスト・ソサエティ」ダイヤモンド社)

※「創造的破壊」(Creative Destruction)
古きものを壊し、(内部から)新しきものを創造する過程のこと。

シュンペーターのリーダーシップ概念

創造的発展の契機となる役割を果たすこと」(経済発展の理論による)というのが前提です。

シュンペーターが説くリーダー的存在は「起業家」であると言えます。(彼はアントレプレナーEntrepreneurと言っていて、直訳は企業家です)

それは、会社の経営者や管理職という役職ではなく、要素を積み上げる結果としてのピラミッド型のトップでもありません。 一般的なリーダーシップの概念、例えば現状維持、保守的なリーダー、既存のリソースを管理する役目は「マネジメント」であるとして区別しています。

さらに、
マネジメントのようにプログラム的な教育で「リーダーシップ」を得ることは、困難としています。「リーダーシップ」は、実体験による「暗黙知」が重要だからです。
※暗黙知とは、コトバでは表現・説明することは難しいが、知っていること。(例えば、子供の時に憶えた自転車の乗り方や縄跳びの2重飛びの方法をコトバで伝え、聞いた人が理解できるのか、など。)

シュンペーターの「リーダーシップ」の定義のヒントになるのが、「新結合New combination)」=創造的構築です。

「暗黙知」を他のものと結合しながら、新たに生じるアイデアを「形式知(コトバや数式で表現できる知識)」に変換することことです。

これを多くの方が「イノベーション」として認知されており、「イノベーション」を実践できる者こそリーダーである、としているのがシュンペーターです。

彼の言う「アントレプレナー」とは、
ゼロから新しいアイデアを創造する創案者ではなく、自分の周りにある既に存在する異なる多くの情報・データ・機能・要素などの組合せによるアイデアを発掘し、周囲(フォロワーなど)に刺激を与えて、実行・推進する役割をする人のことです。

その際、リーダーシップに重要な役割またはアントレプレナーの能力として2つを挙げています。

数多くの情報、アイデアからどれを選択(意思決定)するのか・・・この「正しい決断(Right decision)」が一つで、さらに環境・状況に左右されず起業に結びつける「実行力」もアントレプレナーの能力であるとしています。

新結合(New combination)」

これは、イノベーションの概念と同様で、既存の複数のものの中から新たな組合せを発見することです。

この時、アントレプレナー=リーダーは「触媒」の役割となります。
各リソースなどから発展の景気となる要素を発見し、化学反応を促すようなことと考えてください。

この触媒としての役目は「インパーソナルセオリー(脱個性説)」であると言えます。

「インパーソナルセオリー」についてはコチラ>>