満足か?後悔か?定年期をピーク・エンドで考える

「私が十三歳のとき、宗教の先生が、何によって憶えられたいかねと聞いた。誰も答えられなかった。すると、今答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよといった。」

ドラッカー名著集『非営利組織の経営』より

何によって憶えられたいか、その問いかけが人生を変える。

後ほど参考として、「死期に近い高齢者の後悔すること」「人が不安に感じていること」などについてアップしてあります。これらで考えたことは、後悔した内容というより(内容も大事ですが!)、「後悔のキッカケとなる時期(機会)に人は何をしているのか?」という点です。死期は一生に一度で、かつ、いつ迎えるのかはわかりません。ただ、人生における転機では同様に「満足か?後悔か?」を考えている時ではないかと思ったわけです。
それが定年期や転職期、卒業期、離婚期などの“エンド”の場面ではないでしょうか。

心理学「ピーク・エンドの法則」

1999年心理学者ダニエル・カーネマンによって提唱された『ピーク・エンドの法則』。

人のあらゆる経験の快苦の記憶はほぼ、ピーク時(絶頂期)と終了時の快苦の度合いで決まるというものです。

例えで言うと、

数日間の旅行に出かけたとして、その間のピークが楽しい感情であると記憶し、無事帰宅したとすると、どんなに疲れていても、『楽しかった旅行』『満足した旅行』となります。

逆に、

最悪のトラブルが発生し、怒りの感情がピークとして記憶され、その他が楽しく、そして無事帰宅できたとしても、『最悪の旅行』『疲労困憊となった旅行』となる・・・というもの。

つまり、感情と結果の関係性です。

それほど大きなトラブルがなかったとしても、帰宅時に不快な思いなどがあるとそれが強調されて記憶され、『楽しくない旅行』として終わってしまうことも同様の原理です。

これは、人の脳に「ヒューリスティック」という特性があり、全体として評価するのではなく、ポイントで簡潔に評価するというものの一つに繋がっていると考えられます。

では、この「ピーク・エンドの法則」をベースに“職業人生”を考えてみると、まさしく定年期は「エンド」の時期にいます。また後ほどの情報にある高齢期も“人生”の「エンド」と言えます。

色々な人生の記憶の中で、ピーク時の記憶もあるでしょうが、もし中高年層としての生活が思わしくなかった場合、そこにネガティブの心理面、思考面が強調され、後悔を発するという現象がそこにあるのではないかと思われます。

若い時には苦しく、悲惨な歩みがあったとしても、高齢期に良い環境、良い人間関係があるのなら、後悔のコトバはないのでは!? と考えたのです。

それを踏まえて、次の後悔のコトバを見てみましょう。

死期での “後悔リスト” は何を教えてくれるのか

オーストラリアのナース(Bronnie Wareさん)が記録したもので、死期の近い方が語る後悔の中で多かったベスト5です。

  1. 「自分自身に忠実に生きれば良かった」
  2. 「あんなに一生懸命働かなくても良かった」
  3. 「もっと自分の気持ちを表す勇気を持てば良かった」
  4. 「友人関係を続けていれば良かった」
  5. 「自分をもっと幸せにしてあげればよかった」
(出典参照元:Top five regrets of the dying

死ぬ前に後悔したくない20のこと

  1. 他人がどう思うかなんて、気にしなければよかった
  2. 幸せをもっと噛みしめて生きればよかった
  3. もっと他人の為に尽くせばよかった
  4. くよくよと悩まなければよかった
  5. もっと家族と一緒に時間を過ごせばよかった
  6. もっと人に優しい言葉をかけていればよかった
  7. あんなに不安を抱えながら、生きるべきではなかった
  8. もっと時間があれば…
  9. もっと思い切って冒険をすればよかった
  10. 自分を大切にすればよかった
  11. 他人の言う事よりも、自分の直感を信じればよかった
  12. もっと旅をすればよかった
  13. あんなに働きすぎるべきではなかった
  14. もっと一秒一瞬を大事に過ごせばよかった
  15. 子供達に好きな事をさせてやればよかった
  16. 言い争いなどしなければよかった
  17. もっと自分の情熱に従うべきだった
  18. もっと自分のために頑張ればよかった
  19. もっと自分の本音を言うべきだった
  20. もっと目標を達成すればよかった

このような情報は他にもあるのですが、これらの後悔のセリフが発せられるのは何故でしょうか?

「自分を偽って生きてきた」ということなのでしょうか?

さらに、自分自身のことのみならず、他の人達との関係(家族、友人知人など)についても後悔の念があります。自分だけでなく、他者に対する思いやりも大切にしてこなかった・・・というダブルの後悔も垣間見れるわけです。

これらの後悔のセリフは、心の奥底に隠している、またはそんな気持ちに見向きもしない現実が常にあるのではないか・・・とも感じられるのです。

冒頭にも紹介した「ピーク・エンドの法則」で考えると、どんなに後悔するような過去があったとしても、定年期の充実したセカンドライフ、高齢期における楽しいサードライフがあるのでしたら、喜ばしい感情と記憶が、過去の後悔するような感情を抑制し、 後悔の念を発することはないのではないでしょうか。

それを考えると、これからグラジェネ(定年退職)世代を過ごすことになる多くの人達は、「年金が少ない」「物価が高い」など、あるいは人間関係におけるストレスを増やし、不安や不満ばかりの日々を送るのではなく、いかに楽しく、豊かに、ゆとりある「グラジェネ・ライフ」を送るか、ということにフォーカスし、すべきことをした方が良いと思います。

そのためにも、ミドルシニアの時期は大事なのです。

幸福より不安を感じやすい日本人

日本人の特徴なのでしょうか!? 生活に関する不安は、誰しも感じているようです。

下図は、20歳から60歳以上の方にセコムが調査した結果です。

(震災直後より少し減少していますが、)7割以上の方が不安を抱いています。60歳以上の方は、40〜50%の方が不安を抱いています。

セコム調査2014:生活への不安を感じているか

セコム株式会社の調査2014:不安を感じているか)

主にどんなことに不安を感じているか・・・については、「老後の生活や年金」の不安が40.3%、「健康」の不安が25.6%です。

次は、内閣府による調査(2010年発表)で60歳以上の方の結果です。

不安を感じている人は71.9%で、5年前より増加しています。

下図は、経済状況を踏まえた上での不安状態なのですが、中央の3つの「家計にゆとりのない人」の不安は7〜9割以上が感じています。

内閣府2010:不安

内閣府2010:高齢者日常生活の不安について)

これが全てではないのですが、今の日本の現状に近いと言えると思います。

これらのデータを見ても、60歳を超えた人達の不安は現実あるわけですから、それを変えるためには、事前の準備が必要だと思えます。

勿論、ミドルシニアだけの話しではありません。「まだ、俺は若いから!」・・・という人もいるでしょう。

今日事故にあって寝たきりになったらどうしますか?

明日病気になって人に会うことが許されなかったらどうしますか?

大切な人が突然いなくなったら、どうしますか?

もともとヒト科は後悔する生き物・・・という考え方もあります。その後悔の度合い、量を少しでも減らすことができるとしたら、“今しかない”ということになります。

明日からではなく、今日出来ることを実行しなければならないと思うのですが、如何でしょうか。