セルフ・ブランディングとは(1)“私”をブランド化する戦略

ブランディングとは

Brand  ing

“ing” だから、現在から未来に向けて進行していること。つまり、行動的と言えます。
ブランディング』とは “ブランド” になるため、または維持するための活動・行為であり、持続的なプロセス、です。

ブランディングの重要性、ブランドの役割についてはコチラ>>

『セルフ(Self)』とは “自分自身” 。
セルフ・サービスやセルフ・チェックなどのように、他人が自分に行なってくれる事柄を “自分自身で” 行なうことを指しますから、『セルフ・ブランディング(Self Branding)』は、“自分自身で” 自らを『ブランディング(Brand-ing)』することになります。

人は“ブランド”になれる

ブランド” というワードは、大企業の社名やロゴ、高級品などを連想しやすいものです。

では、例えば、
 大好きな映画監督は誰ですか?
 好きなアニメ監督は誰ですか?
 好きな作者は誰ですか?
 好きな画家は?
 好きな作曲家は?
 好きなパティシエは?
 好きな〇〇は?
 ・・・

お金を払う、時間を費やす、心を許す、想いを寄せる、エネルギーを注ぎ込む‥‥そんな相手がいるならば、あなたにとって “ブランド化” している該当者となります。
 つまり、“人” もブランドになり得るわけです。

人の“ブランディング”とは

会社等の場合は “コーポレート・ブランディング” と称されていますが、個人の場合は

  • セルフ・ブランディング
  • パーソナル・ブランディング
  • マイブランディング
  • 自己ブランディング

などと呼ばれています。名称問わず広い意味で “私” のブランディング、自己ブランディングです。
 多少の違いとしては、『セルフ・ブランディング』と『パーソナル・ブランディング』が、使う人によって次のように分類されています。

自己ブランディングとは、パーソナルブランディングとセルフブランディングがある。

『セルフ・ブランディング』は社外・対外的なブランド化、『パーソナル・ブランディング』は社内・組織内でのブランド化、と意味付けされています。
 一般的な概念の違いとして、“私にとって相手は誰か?” という点だけでなく、自己のビジョンや価値観の枠の広さも違うと言えます。

この一般的概念で捉えれば、“私” の活動範囲が大きく変わるでしょう。
 例えば、『パーソナル・ブランディング』は、会社組織内で自身のキャリアを磨き、出世(昇格)していきたい人は、そのための活動プロセスになります。『セルフ・ブランディング』は、社外・対外的(クライアントなども含む)にも成功したい人が自身のキャリアを磨き、個人の目的のために(転職や独立なども選択肢として)活動していきます。

主観的な見解ですが、もし “私” が〇〇社の営業職の場合、客先から『あなたのいる〇〇社に依頼したい!』と『あなたがいるから〇〇社に依頼したい!』では、成約できた要因の意味合いが違います。後者をセルフ・ブランディングの結果と捉えることができます。

このセルフ・ブランディングに関して、『会社組織に所属せず、独立して、自らをPRする戦略!』と定義している人たちもいますが、本業以外でも人間関係は存在しており、副業や社内起業などの多様化した時代もあるため、特に独立する必要はないと考えます。強いて言うなら、独立ではなく “自立” でしょう。

“私” のブランディングの意図は、社内・組織内のみではなく、社外・対外的にも影響・通用することが前提になります。『セルフ・ブランディング』『パーソナル・ブランディング』どちらにしても、ブランディングの根幹となる本質は同じです。

セルフ・ブランディングを行なうことでパーソナル・ブランディングもカバーできると考えている点もあり、当方では『セルフ・ブランディング』のワードを使っています。

ブランドに対する誤解を払拭する

「ブランド」とはどんなイメージなのか? という問いについて、次のような誤解は払拭しておきましょう。

  • ブランドは、大勢の人たちに “知られている=認知されている” ことではない。
  • ブランドは、“有名である” ことではない。
  • ブランドは、“社名や商品、ロゴ” だけを指しているのではない。
  • ブランドは、“イメージ・キャラクター” ではない。
  • ブランドは、“発信者(主体者)が決める” ことではない。
  • ブランドは、“規模” の大きさではない。
  • ブランドは、“高い価格” だからではない。
  • ブランドは、老舗など “古い” からではない。
  • ブランドは、“一時的な流行” ではない。
  • ブランドは、“周りの人が言っている” からではない。

2010年代に、YouTuber(ユーチューバー)というカテゴリーが世界的に拡大しました。まさしく “人のブランド化” を象徴する世界観です。
 有名になりたい、多くの方に登録してもらいたい、稼ぎたい‥‥など目的は人様々ですが、途中で諦める人、消えていく人、訴えられる人、逮捕される人もいる中で、日本人YouTuberの先駆者の一人であるHIKAKIN様などは、セルフ・ブランディングの成功者と言えます。

ブランドのイメージとは

セルフ・ブランディングを成功者している人と成功していない人の違いは何か? を探っていくことでヒントが見つかります。

  • “私” はどこに居たいのか?
  • “私” はどこへ行きたいのか?
  • “私” は誰と行きたいのか?
  • “私” は何をしたいのか?
  • “私” はどんな人になりたいのか?
  • “私” はなぜそうなりたいのか?

これらを明瞭にしていくことは重要ですが、セルフ・ブランディングの効果・成果を左右するのは、これらの内容如何と考えることができます。

“私” のあり方、生き方」が「私のブランディング」への影響します。

人のブランド,ブランディング,人生そのもの

私の“ブランディング”とは?

「あなただから、頼む」
 「あなたから、買う」
 「あなただから、信じる」

このような関係性、心理的状態になっていることを表します。(個人でも会社でも考え方は同じです)

ブランディングとは、私の価値を他者に承認・信頼し続けてもらうこと

“私” のブランディング(自己ブランディング)の根幹は、『 “私の価値” を他者に承認・信頼し続けてもらうことと考えています。(*“承認・信頼”を、“約束” や “共感” などに言い替えて意味付けることもできます)

ブランドは、契約である

バッグに “LV” のロゴが付いているならば、世界的ハイブランドのルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTONの商品と信じ、買う方がいます。

これはバッグ自体の価値に対してというより、ルイ・ヴィトンである証の商品に対して価値を理解し、安心と信頼感が先立って売買契約に応じ、“LV” ロゴありのバッグを所有することにメリットを感じます。

しかし、この世には模造品(本家とは無関係の酷似品、コピー商品)が存在しており、(承知の上で購入する人はともかくとして、)“LV” を信じて売買契約に応じた後々、『騙された!』ことに気づき訴える、という事実があります。売る側が騙しているのなら、「債務不履行=契約不履行」と判定される事案です。

“私” というブランドも同じく、他者が承認・信頼して取引をするのなら、契約をしたこととなり、それに準じた約束を果たす必要があります

ブランドは、約束の証である

自分自身の強みやメリットなどをアピールすることでブランドになれるのではなく、自らが発信した何かしらの “私の価値” について、約束の証として偽りなく一貫性をもって活動を継続し、それらが他者によって承認・信頼された結果としてブランドになれるということ。

つまり、“約束を守り続けること” がブランディングです。

ブランディングそのものは主体的かつ能動的、戦略的な活動であっても、ブランドになれるかどうかは、全て他者の反応次第、受け方次第と言えます。ブランドは他者の抱くイメージだからです。

約束を守り続けること” は “私” であって、他者ではありません。

ブランドは部分と全体の両方である。それは製品やサービスのマークであると同時に、有形・無形の満足を約束する包括的な価値でもある。
ジャン・ノエル・カプフェレ(J.N.Kapferer)

ブランドは、生きた記憶である

人は経験したこと、学んだこと、感じたことなどを記憶の中に閉じ込めています。人の記憶というものは、膨大な情報量の貯蓄です。ただ、この世界にある情報量から比べれば、些細なものです。
 世界の情報量を100とすれば、一人の記憶情報量は、小数点以下にゼロが何個つくのでしょうか。

人の記憶は曖昧で正確性に疑念もありますが、それでも世界の情報と共有し、一致させようと努めています。例えば、

商品・サービスの差別化
差別化のイメージ

数多くの商品・サービスの情報から “何を選択するのか?”

生活に欠かせないモノになればなるほど、人は買うたびに『どれを買おうか?』と悩んでいられません。これまでの経験と知識を結集して短時間で『コレ!』と選択します。『私はコレと決めている』状態は、『コレ』がその人にとってのブランド化した商品・サービスです。

記憶情報の中で、現在進行形として生き続けていると言えます。

『あぁ、アノ人ね。もう必要はないわ!』と記憶の片隅に葬られないようにしていくことが大切です。

『あなたは、何によって憶えられたいのか?』
ピーター・ドラッカー(プロフェッショナルの条件より)

ブランドは、長期的かつ永続的な差別化によって構築される

もともと “ブランド” は「差別化」を目的としていますが、他者とは違う「差別化」をすればブランドになれるわけではありません
 一時的な人気を博したとしても、追従者(ライバルや模倣者など)が現れて、「差別化」は薄れ「同類化」されていきます。つまり、『大して変わらないなら、どっちでもいいし、安い方でいいよ!』となってしまえば、ブランドにはなり得ません。

例えば、スマートフォン市場でアイフォーン(iPhone)ブランドが、長期間、世界中でファンがいるのは、常に成長しようと努め、他者に “価値” を与え続けようとしているからでしょう。
 物の市場価値性には周期(プロダクトライフサイクル)があり、かつ物の消耗性を考慮すると、数年で新製品を世に送り出すために何年も先のことを計画して日々開発をおこない、他者の今求めるものに応えようとする必要があります。
 その持続的な努力と成果が、アイフォーン(iPhone)ブランドの価値の要素と考えます。

ライバルなどと「同類化」されないために、長期的、永続的に「差別化」を進めた結果、ブランド化は定着したことになります。

人も同じで、例えば、タレント北野武(ビートたけし)氏や長嶋一茂氏は、数十年前と現在の活動は大きく違います。相当勉強されていると思われますが、いまだに人気があるのは、長期的、永続的な「差別化」があるからと言えます。

“ブランディング”は何から始めるのか?

人は、他人の目が気になったりします。『人の目なんて気にするな!』と助言を仰ぐこともありますから、無視することもできます。

ブランディングの観点からは、「(他者に)どう思われているか!?」ではなく、「(他者から)どう思われたいのか!!」「(私は)どうなりたいのか!!」という視点が重要なところです。

どう思われたいのか!!」「どうなりたいのか!!」というイメージ(ビジョン)を前もって備えており、それをベースに活動していく中で、対象(お客・他者)にそのイメージが理解され、共感してもらえることで、より関係が強化されていきます。
 イメージ(ビジョン)を活動中に発信することはある意味、コミットメント(公言・約束)していることにもなります。(※これは「ブランド・アイデンティティ」と呼ばれている部分です。)

ブランドに抱く感情とは

人が「ブランド」というものに対して抱く感情を想定します。

例えば

  • 安心感
  • 信頼感
  • 満足感
  • 充実感
  • 快適感
  • 高揚感
  • 優越感
  • ステータス感
  • 期待感
  • 帰属感
  • 共感
  • 愛慕感
  • 親密感
  • 一体感  など。

もし、このような感情が対象(お客・他者)に芽生えなければ、ブランドとして存在することは難しいはずです。
 最初はあったとしても、裏切るような事件・出来事があれば、全く反対の感情に陥ることもあると理解しておく必要があります。

“私” のブランディングは、上記のような感情を対象(お客・他者)が抱き続けられるよう、努めなければならないと考えます。

良いブランド化と悪いブランド化

ブランド」はすぐに構築されるものではありません。それなりのプロセス(実績、経験、対応など)があって徐々に確立していくものです。
 承認・信頼してもらうために、どのような活動をしなければならないのか? ということを考えた上でブランディングをスタートさせます。

嘘の “私”、装飾した “私”、自己中心的な “私” ‥‥ではブランディングは続けられませんし、最初は誤摩化せても、いつかボロが出ます。「悪いブランディング」であった場合、あるキッカケで「承認・信頼」から「拒否・不信」へ一気に崩れ落ちます。

例えば、

悪いブランディングの事例

ブランド崩壊は容易いことですが、再構築は相当な時間とエネルギーが必要になることは想定できることでしょう。

「良いブランディング」のためには自身を理解(自己分析)し、自己の価値を定義し、ブレない信念を明瞭化し、イメージコントロールしていく必要があります。

良いブランディングに必要な資質

「良いブランディング」のための資質と言えば複数ありますが、ここでは3つの資質をご紹介します。

良いブランディングの資質
愛ある情熱

“愛ある情熱” という表現は最近しないのかもしれませんが、大切な資質です。

自身を理解(自覚)し、自身を信じること(自己受容)、そして、これからやろうとしていることに情熱を向けること。
自分らしく、飾らず正直に。夢やゴールに誠実であること。自身に関わる人たちを大切にすること。
 それらがブレることなく、持ち続ける一貫性などが大切です。

正なる価値観

価値観は人様々ですが、ブランディング構築のための観点として、ブレないための拘りを持つこと、手抜きをしない、贅沢をしない、感謝するなどの価値観は大切な資質になります。

『偉大な大工なら、誰も見ないからと言って、棚の裏側に悪い木材を使ったりはしない。』
スティーブ・ジョブス氏(Apple設立者)
真の向上心

現状に満足せず挑戦し続け、ネガティブさや失敗も受け入れ、改善・改良に結びつける意思は必要です。向上心や自己成長(自己価値の醸成)の意識は大切な資質になります。

続きます・・・

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