セルフ・ブランディングとは(2)“私”をブランド化する戦略
・・・続きです。
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ブランディングとポジショニングの関係
ブランディングを行なうのは、
- 「■■■だったら、〈B〉さんにお願いする」
- 「■■■については、〈B〉さんに訊く」
- 「■■■なら、〈B〉のところで買う」
となることが一つの目安です。
美容室なら■■店の〈B〉さん、車の修理なら■■町の〈B〉さん、豆腐を食べるなら〈B〉さんが作る木綿豆腐、リフォームなら■■市の〈B〉さん、靴を買うなら〈B〉さんのいる■■■店、デザイン制作なら某社の〈B〉さん、醤油を買うなら三河屋さん‥‥など、個々人の想いを含めた拘りとなる会社、商品、“人物” が『ブランド』となります。
コトバとして表現しないにしても、〈B〉に関する装飾語(例:■■町の、■■店の、など)や形容詞(例:素晴らしい、美味しい、静かな、など)が具体的に付加されることで、関係は深まっていることになります。
美容師や販売員、歯医者などのように生活の中で接する回数が多い人の場合、勤務するお店や町が変わったとしても、〈B〉さんを求めて行動経路を変更することがあるのは、〈B〉さんでなければならなくなった信頼関係を結べているからと言えます。
他にも人は沢山いますから、複数人の選択肢の中から〈B〉さんが指名されることは、ブランディングの成果と言えます。
ポジショニング
前記した “■■■” の部分は、ポジショニングによるポジション(セグメント・属性・分野など)付けです。
■■■のポジショニングに関するセグメント(地域・属性・分野などの分類など)が小さければ小さいほど、ブランディングはし易くなると言われています。ブランディング自体に市場規模や客数等は関係ありません。「知ってもらう」という点では人数の多さはポイントですが、「承認してもらう」という意味では一部の人でもいいのです。100人中100人に受け入れられる必要はありません。100人のうち1人でも良い、と考えます。
極論で言うと「人のブランド化」は、ターゲットとなる人、共感してくれる人、理解してくれる人と信頼関係を築き、受け入れてもらえば良い、ということになります。
つまり「人のブランド化」は「ファン(人気)化」とも言えるわけです。
ファンがいる、ファンが増えるのには理由があります。
最も分かりやすい理由の一つは、好き嫌いの感情です。好き、嫌い、どちらでもない、という感情・情動は、人の経験などにより描かれた価値観やアイデンティティなどによるもの。ですから、沢山の人に好かれようとすること自体に無理があるため、好かれたい人に好かれる、ファンになってくれる人になってもらう・・・そのためにはどうすれば良いのか、ということを考えていくことになるのです。
ポジショニングの延長線上にブランディングがある
「ポジショニング」があって「ブランディング」があるというのも、ポジショニングの時点から対象(お客・他者)にコミットする準備をしているため、そこからの一貫性が伴っているプロセスがブランディング活動と言えます。
ただし、ポジショニングを間違えていれば、ブランディングは蚊帳の外状態で行う羽目になります。
「ブランドをどのように決めようか?」と考える前に、「ポジショニングをどこにしようか?」を考えることが先手です。ポジショニングが決まれば、ブランディング活動の方向性は順調に進めていけるでしょう。
ブランディング活動の再確認
『ブランディング』のワードが認知されてきましたが、会社や団体を運営する方にとっても、そこで働く従業員にとっても大切なことと意識はしつつ、“ブランド” “ブランディング” に関して、理解度が薄い、あるいは誤解している、それによって活動そのものが疎かにされている現状があるように感じています。
中小零細企業の経営者、個人事業主、フリーランサー、ネットワーカー、さらに会社勤務(サラリー従業員)の個人にとって、生き残るために強化すべきことは『人のブランディング』と考えています。
今回、“私” をブランド化(ブランディング)することのメリットを再確認し、具体的な活動を考えてみるのは如何でしょうか。
“ブランド”とは何だろう?
ブランドの由来は、家畜の識別のために「焼印を入れること」とされていますが、“私” のブランディング(セルフブランディング、パーソナルブランディング)において、現実味のある意義を求めてみましょう。
ブランドの定義、概念というのは、書籍、ネットで様々なことが書かれています。例えば、Wikipediaでは、
※ブランドとは・・・
ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念。(中略)あらゆる角度からの情報と、それらを伝達するメディア特性、消費者の経験、意思思想なども加味され、結果として消費者の中で当該財サービスに対して出来上がるイメージ総体。
(出所:Wikipedia.2020より)
ブランディングはイメージ戦略であり、ファン獲得戦略になります。学者カプフェレ(J.N.Kapferer)は、「独創的なプロセスである」とも伝えています。
もともとブランディングの目的は、ビジネス市場でのライバルとの差別化であり、競争優位性を得るための戦略です。
ライバルとなる他者・他社を意識する(無視しないという意味)と同時に、市場を意識していきながらポジションを定め、ビジョンや使命を見出した上で、ブランディングを行います。
ブランドは有形・無形の価値そのものであり、ブランディングはその価値を訴求するための活動と考えることもできます。
つまり、“私” の価値を必要とする、“私” の価値を認めてくれる、“私” の価値を生かしてくれる場所を見つけましょう。
人の「ブランディング」とは・・・
「あり方、生き方」そのものが、「ブランディング」になると考えていきます。
『ブランディングは、キャラ設定が大事!』などと言われる人もいます。キャラ設定は要素ではありますが、誤解がないようにしないといけないのは、キャラは「自分の中に備わっているもの」でなければなりません。ムリに作り上げてしまっては、長続きしません。例えば、コリン星からきた女性タレントさんは、『正直疲れた』と言っていました。
「ブランド」は維持することに意義があり、価値があります。疲れて途中で止めるようなキャラ設定でのスタートは、良くありません。
「あり方、生き方」そのものが「ブランディング」であるという観点で、活動(生き方)に一貫性や整合性がなければなりません。例えば、表向きには素晴らしい発言、素敵な活動をしているのに、裏ではゴミのポイ捨て、家庭内DV、脱法ハーブなどをやっているようなら、一貫した「ブランド」イメージは作れないということです。
さらに、安易にブレてはなりません。例えば、昨日言っていたことが今日には変わっている、などは周囲に混乱を与えてしまいます。折角 “私” を選択してくださったターゲットが逃げてしまう恐れもあるわけです。
一貫性を保つためには、価値観、信念、コンセプトなどが備わっている必要があります。
それらをコアとした「私のあり方、生き方」が「私のブランディング」となり、それに付随した商品・サービスなどに価値が付加されていくことになる、と考えられます。
ブランドは、“私”に意味と方向を与える。
それでは、「ブランディング」を行なっていく上でブランドとは具体的にどのようなものなのか。
「ブランドに備わる価値」、「ブランド構築のための構造理論」を別ページで説明しています。