フォロワーシップを身につける

「フォロワーシップ・キャリア」は、“リーダーシップ” “マネジメント”と共存し、相互作用によって活かされるキャリアです。つまり、“リーダーシップ” の下部に「フォロワーシップ」があるのではありません。
「フォロワーシップ」の質の良し悪しが、個人の生き方、歩み方の質と結果に影響を与え、人間関係にも反映されます。会社組織内での遣り甲斐も変わり、仕事での成果にも変化をもたらします。質の高い「フォロワーシップ・キャリア」を身に付けることの重要性を伝えています。

その意識は、常に前向きでかつ冷静であることが求められます。

フォロワーシップのタイプ

「フォロワーシップ」は、「リーダーシップ」との相互関係であるわけですから、ある意味「リーダーシップ」(の状況・タイプ)によって、「フォロワーシップ」も変化することが予想されます。

これを「コンティンジェンシー」(状況適応)というのですが、「リーダーシップ」やチーム内の環境、あるいはその時の能力(ケイパビリティ)によっても「フォロワーシップ」のタイプが変化すると言えます。

先ず、
ロバート・ケリー(Robert E. Kelley)教授やバーバラ・ケラーマン(barbara kellerman)講師により、「フォロワーシップ」のタイプが5つに分類されています。
「貢献度の高低(積極と消極)」と「批判的思考(主体的)と無批判思考(依存的)」の2軸によるものです。

followership_types

これは、個人個人を各々のタイプに適合させていると考えるより、個人がどの場面・状況で、どのタイプになるのか、と考える方が無難であると感じます。
ようは、どんなにやりたい仕事、自分の好きなタスクであっても、その組織のリーダーのタイプによっては、協力的にフォローできないということもあり得るからです。

逆に、貢献度の低い「孤立型」のタイプでも、リーダーによっては「模範型」に変わることだってあるのです。

followership_typesフォロワーシップのタイプ

以前、シゴトには4つあるとお話ししたことがあります。「仕事(仕えるタイプ)」「志事(志や情熱の高いタイプ)」「私事(自己中心的タイプ)」「死事(嫌々ながらタイプ)」です。
これに当てはめると、「仕事=順応型」「志事=模範型」「私事=孤立型」「死事=消極型」になるのではないかと・・・。

「フォロワーシップ」を磨くために、「貢献力」を身に付けようとするある教育プログラムがありました。詳細はプログラム内容だけでは不明ですが、「貢献力」を身につけるよりも、その仕事の行為によって「貢献したい」という思考の転換が重要です。
「貢献欲求」がアップすれば、意図的に貢献できるよう必要な要件を見出だすはずです。それは一人一人違うわけですから、「貢献力」を身につけるのではなく、「貢献」できる「自分」を発見するということから始まります。大きさは関係ありません。

さて、もう一つの「批判的思考」について簡単に触れておきます。

批判的思考=クリティカル・シンキング

この「批判」というのは、個人的な主観、根拠も論理もない、代替案もないただの否定、怠慢による拒絶・・・などではないということです。批判的思考には、色々な解釈があるようですが、常に建設的である必要があります。「弁証法」的な批判(アンチテーゼ)というものでしょう。

参考として、Wikipediaにある「批判的思考」のガイドラインは、

Wadeは、批判的思考のガイドラインを次のようにまとめた。

  • 問いをたてる。
  • 問題を定義する。
  • 根拠を検討する。
  • バイアスや前提を分析する
  • 感情的な推論(「私がそう感じるから真実である」)を避ける。
  • 過度の単純化はしない。
  • 他の解釈を考慮する。
  • 不確実さに堪える。

Leftonは、次のようにまとめている。

  • 利用可能なもの、最初の思いついた答えに固執しない。
  • あまりに早く一般化しない。
  • 楽な解決に固執しない。
  • 最初の答えに合致するような決定に固執しない。
  • 一部の利用可能なアイデアや前提の検討だけに終始しない。
  • 感情的にならない。
  • もともともっている考えに固執せずに、オープンになること。

このように、「フォロワーシップ」の立場において、知的・知性・論理的・冷静・客観的などが必要であると感じられます。

フォロワーシップに求められる能力

「フォロワーシップ」に求められる能力として、ウォーレン・ベニスやバーバラ・ケラーマンなどは、

  1. リーダーのビジョンの正しさ、実現可能性を評価する能力
  2. 選んだ対象へ意図的に注力(集中)する能力
  3. 常に批判的にリーダーを評価し続ける能力。冷静さ

が必要であると主張しています。レベルの高い能力です。

これを先ほどのタイプで考えると、「順応型」はかなりの努力が必要ではないでしょうか?依存していた期間が長ければ長い分、正しい批判ができるようになるには、それなりの勇気と智慧が必要です。
自分の主張、自分の価値観、自らのビジョンなどがほど遠い無意識の世界に没している場合は、先ほど列挙した「批判的思考」をもってリーダーを評価し続けることができるのか、そのビジョンが正しいと判断できるのか、・・・と考えると、相当な覚悟が必要です。

「善玉フォロワー」となるか「悪玉フォロワー」となるか

この「善玉」「悪玉」という表現は、「リーダーシップ」「フォロワーシップ」における日本の権威者、神戸大学教授金井壽宏氏によるものです。

「悪玉フォロワー」は私利私欲のフォロワーです。

確かに、リーダーにも私利私欲の方がいますので、フォロワーにいても不思議ではありませんが、「リーダーが私利私欲だから」とか、「リーダーがダメだ」とか、「リーダーは無能だ」とか、もしそう思っているなら、・・・本末転倒?・・・いいえ、この場合は「責任転嫁」の方が正しいかもしれません。
(リーダーが「ダメな部下」などと言ったら本末転倒なのでしょう。)

「責任転嫁」は、そもそもスタート(取り組み)の時点で他者(リーダー)に依存しているため、そこに正当の判定基準がありません。ですから、結果が良ければ自分の評価、悪ければ他人の責任になるために起こるものです。

「善玉フォロワー」は、スタートの時点で自らの主体的な意思決定がありますから、結果が良ければ他者のお陰、悪ければ自分の能力・努力不足と捉えることができます(責任帰属)。
ですから、言動自体も利他的、客観的、自律的になります。リーダーが間違っていれば、愚痴ではなく直言できますし、冷静に評価することができます。これが「善玉フォロワー」です。

「フォロワーシップ」は、実際現場で活躍することになります。ということは、その業務遂行能力(実現可能力)も必要です。ただ、全ての能力が必要である必要はなく、「これだけは誰にも負けない、引けを取らない」レベルの特化した能力があれば問題ないはずです。とくに大企業になればなるほど、業務の分化が進んでいますから、その中での自分の役割に集中し、さらに専門的になることが、「フォロワーシップ」を磨く方法の一つでもあるということです。

勿論、根本的なスキル、理解力や行動力、コミュニケーション力などを必需能力ですから、日々怠らないように修得に心掛けていくことになります。

「フォロワーシップ」キャリアは、会社組織に限らず、家族・コミュニティでも活かせるものだということが言えます。

その身につける方法として、参考になるのが、「70:20:10の法則」です。

「70:20:10の法則」についてはコチラ>>