組織デザイン(組織設計)
視界に入る色の基本は「三原色」。3つの色が混ざり合って世界を彩ります。
赤色、緑色、青色、あるいはシアン、マゼンタ、イエローが各々存在しても素敵ですが、重なり方(協力の仕方)を調整しながら別の色を表現している時、さらに素晴らしい世界観を生み出します。
「デザインする」ことの結果は、個人の想定を超える、秘められた無限の可能性があるに違いありません。
“組織” という個性あふれる多様な個の集合体も、同じことが言えると考えます。
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組織デザインの概略
「組織デザイン」とは、目的(例えば、組織活動の活性化、最大限の能力を発揮する組織作り、など)に照らし合わせて、従来の組織を新たな組織へと構築することです。
組織構造(階層型、事業型など)の構築、あるいは単純な組織編成ではありません。
経営戦略と組織戦略が随伴する「組織の設計(ブループリント)」と言えます。
組織デザインの要素
組織デザインをする上で、6つの要素を意識することになります。
- 組織文化・組織行動(Culture)
- 経営戦略・組織戦略(Strategy)
- 業務プロセス(Core Process)
- 組織構造(Structure)
- 各種システム(System)
- 人財(HR)
6要素の詳細は後ほどにしますが、外部環境の変動などを踏まえて、組織としての成果を引き出すために、これらの具体的な計画と実行を繰り返していくことになります。
そして、組織が成果を “継続的” に出していくためには、重要人物として「リーダー」的存在と「マネジメント」できる存在が必要になります。
成果とは、完璧な成功ではなく、また短期的な目標達成でもありません。失敗を繰り返しながらも挑戦し続け、組織メンバーが一丸となって長期的視点での大きな成果を指します。
そもそも、組織とは何か?
会社(法人)だからと言って “組織” になっているのでしょうか?
会社でないから “組織” にならないと言えるのでしょうか?
例えば、次の集合体は “組織” でしょうか?
- 内閣
- 県庁・市役所
- 公益財団法人日本サッカー協会
- サッカー日本代表チーム
- 侍ジャパン(野球日本代表)
- 公益財団法人日本野球連盟
- 漁業協同組合
- 労働組合
- 国際自動車連盟
- 世界保健機構(WHO)
- 小・中学校の学級
- PTA
- 高校・大学のクラブ・部活
- 山口組(指定暴力団)
- 詐欺集団
- イスラム国(ISIL)
- キング牧師の集会(1963年)
- 音楽フェスティバル
- コミックマーケット準備会
など。
組織とは,企業体,学校,労働組合などのように,2人以上の人々が共通の目標達成をめざしながら分化した役割を担い,統一的な意志のもとに継続している協働行為の体系と定義することができる。すなわち,分化した機能をもつ複数の要素が,一定の原理や秩序のもとに一つの有意義な全体となっているものの意である(略)
(出所:世界大百科辞典より)
集団成員間の相互交渉の結果として生れてきた集団全体としての成員相互関係,つまり役割,地位の体系および各成員の行動規準や伝達および統制の過程の総体を意味する。(略)しかし一般には,集団の内部の構造化そのものを組織という。集団が自然発生的に生じてくるような場合,その成立の初期には組織分化度は低く,明瞭性を欠き,また各成員の受持つ役割,地位,行動規準は変化しやすく,安定性を欠いているといえるが,集団が長く持続していくに従って,次第に安定し,場合によっては,必要以上に固定化してくる場合もある。集団の組織化は,大別して2つの側面に向って行われる。 D.カートライトによると,その一つは,集団の共通目標に適応する方向に成員の行動を引起す機能であり,他の一つは,集団の統合を維持,強化する方向に働く機能であるとされる。
(出所:ブリタニカ国際大百科事典より)
集団の組織はその内部に同時的にインフォーマルな組織とフォーマルな組織をもつ。
では、“組織” と “集団” の違い(または “チーム” と “グループ” の違い)とは何でしょうか?
組織と集団の違い?チームとグループの違いとは?
概念的には、“集団・グループ” の一部に “組織・チーム” があると言えます。
2人以上が集まった “集団・グループ” で、ある一定の要件を満たした時に、“組織・チーム” と見なされると考えられています。
一定の要件とは、バーナード氏による3要素が有名ですが、一般的な要件を下にまとめてみました。
当方の私釈として、次のように表現しています。
組織のリーダー
組織(チーム)にはリーダー的存在が必要です。
下図の “リーダーシップ” を発揮できる人や “マネジメント” できる人です。
リーダー的存在をおおまかに分類すると、下記のような感じでしょうか。
当方では、主に『ロワーマネジメント』の対象となる方々の育成強化を勧めています。
理由は単純で、現在の部長職以上の方々は時代背景の中で、教育されて成長したというより、成果・成績を上げるために自ら努力して勝ち取った経緯が多いようです。
つまり、『教えられていない』から『教えられない』(いわゆる『技術は盗め!』『上を真似ろ!』)という事実が、「部下を育てられない」という現実に繋がっているようです。
今の組織における課題は、上司が部下を育てる体制ではなく、組織が人財を育てるという体系・仕組みの構築です。
組織の目的とは?
組織の目的は、凡人をして非凡なことを行なわせることにある。
天才が集まる組織は稀で、大抵の場合凡人が集まります。各凡人の強みを引き出し、互いの弱みをカバーしていくことで成果へと結びつけていきます。
ドラッカーの組織論
ピーター・ドラッカーは、この組織の良否について次のように語っています。
- 組織の焦点は、成果に合わせなければならない。
- 組織の焦点は、問題ではなく機会に合わせなければならない。
- 配置、昇級、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定は、組織の信条と価値観に沿って行なわなければならない。
- これら人事に関わる決定は、真摯さこそ唯一絶対の条件であり、すでに身につけていなければならない資質であることを明らかにするものでなければならない。
とくに「真摯さ」についての重要性を強調している通り、「真摯さ」の欠如が内部の人財の能力を発揮させるどころか、破壊してしまうような場面もあり、それによって組織の成果を低下させてしまっていることも伺えるわけです。
それほどにリーダー的人物(マネジメントできる存在)は、組織としての成果を最高にも最低にもできる、ということを知っておく必要があります。
勘違いをしてはならないのは、「組織は、組織のために存在するのではない」ということ。
常に社会・個人(市場)のニーズに応えるために存在しているのであり、果たすための手段でしかありません。
ドラッカーは、どんな組織にも関わる「5つの質問」をクリアすることを推奨しています。
「最も重要な5つの質問とは、われわれのミッションは何か、われわれの顧客は誰か、顧客にとっての価値は何か、われわれにとっての成果は何か、われわれの計画は何か、という5つの質問からなる経営ツールである。」
これらを踏まえた上で、戦略を立て、組織を構築していくことになります。
プロデュース的リーダーのスキル
当方が推奨しているリーダーシップとは、「コンティンジェンシー理論=条件適合理論」に基づき、マクロ環境の変化に応じて変化させられる組織創りです。
「コンティンジェンシー理論(Contingency theory)」は、バーンズ・ストーカーやローレンス・ローシュによるものです。
環境などが劇的に変化している現在(VUCA時代とも言われている)、常に最適な組織は存在しないという前提で、環境に合わせた組織創りの必要性を提唱しています。
企業・産業と外部環境の関わりもそうですが、企業内での各組織(部門など)も同様に変化させるというものです。
例えば、製造部門と営業部門が同じ組織構造では効果が最適化されないと言えます。
ローレンスは、企業の「分化」と「結合」という2つの概念で組織論を見ているのですが、分かりやすく言うと、人間の内蔵と脳の関係に似ているということ。
内蔵は、それぞれの機能(役割)を果たすために適した細胞構造を備えており、脳は数多くの内蔵の役割を結合させ、バランスよく機能させているということです。
ここで、変化の激しい環境におかれている産業や企業は高度に「分化」と「結合」がされており、環境の変化が緩い(不確実の低いという表現)産業や企業の「分化」は程度が低く「結合」パターンも上下関係での結合であるとされています。
これは、マネジメント力のレベルにも影響していると言えるのでしょう。
組織が成長し成果を上げていくためには、それぞれの環境などに応じた組織創りを必要としており、そのためには外部環境からどのような組織創りをしなければならないのか、という智慧と適応力を身につけていくことが必要であると理解できます。
その際に考えるべきことが、組織戦略です。
ここで一般的なことは「組織は戦略に従う」であり、ドラッカーもこれをもとに全てが語られているように思えます。が、場合によっては、「戦略は組織に従う」という場面もあるということです。
「組織は戦略に従う」は、アルフレッド・D・チャンドラーJrが提唱(1963)しており、「戦略は組織に従う」は、イゴール・アンゾフが提唱(1979)しています。
両者の語る「組織」は同じ概念ではありません。
チャンドラーの言う「組織」とは「組織構造=Organizational Structure」、アンゾフの言う「組織」は「組織能力=Organizational Capability」です。
これらを踏まえた上で、「組織デザイン(組織設計)」を行なうことになります。
これらをコントロールすることができるリーダーシップ力‥‥これこそ「プロデュース的リーダー・スキル」であると言えます。
プロデュース脳を鍛えていきましょう。