キャリアとは
はじめに
『キャリア』という抽象的ワードは、誰もが容易に使えることを踏まえると、定義を固定化するのは無意味なのかもしれません。
文部科学省から発信されている某報告書にも『「キャリア」の解釈・意味付けは,極めて多様であり,また,時代の変遷とともに変化してきている』と記述されているように、時代背景、年代や個人を取り巻く環境、さらに伝える側の経験値や価値観なども相まって、意味や解釈は違ってきます。
一般社会における主な解釈、意味付けを受容しながら、ここでは個人的解釈である「キャリア」について発信しています。
私は「キャリア」を、
“目的実現可能な全人的能力の総称”として捉え、多種多様のキャリアから個々人がお好みでコーディネートしていけるものと考えています。
つまり、「生き方」「生き甲斐」「生き様」「人生の意味づけ」「生きる理由」に直結する人間模様ならぬ自分模様を指しています。
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キャリアとは何か?
※キャリア(career)とは、‥‥
goo辞書より
1.職業・技能上の経験。経歴。
2.上級試験や一種試験に合格し、採用された国家公務員。
一般的には、1.の解釈が浸透していることでしょう。転職などの求職活動の際、職務経歴書に記載する内容こそ「キャリア」である、という印象があります。
辞書の解説は、職業や仕事に紐づくことのようですが、説明不足感があるため、掘り下げてみす。
※キャリア(career)とは、‥‥
厚生労働省発表(平成14年7月31日)より出典
一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。
厚生労働省で定義されていることは、“職業・仕事”に紐づいていますが、より“職務”にスポットをあてている感があります。
以前からの会社組織を基軸とするキャリア構築(能力開発や人材育成など)は変革を余儀なくされ、個人主体のキャリア構築(個性や価値観などを尊重した能力開発支援など)へ転換する必要性を厚労省も匂わせています。つまり、“ワーク・キャリア” と称される概念です。
簡単に言えば、会社組織や社会に適した教育を全員に植えつけていたけど、個人の強みや価値観などを踏まえ、個人に適した教育にしていく、というニュアンスなのでしょう。
「関連した職務の連鎖」の表現は、職業的専門的キャリアの観点で正当性はありますが、狭義的に感じるのは私だけではないようです。
それでは、学校教育に関わる文部科学省が発信している定義を確認してみましょう。
※キャリア(career)とは、‥‥
キャリア教育手引きより中央教育審議会答申抜粋
人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見出していく連なりや積み重ねが、「キャリア」の意味するところである。
※キャリア(career)とは、‥‥
文部科学省HP(平成16年/キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書)より
個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積 としてとらえている。
厚生労働省とは視座が違うため定義も違ってきますが、文部科学省のほうが「キャリア」に対する視野が俯瞰的、もしくは視点転換になっている感が見受けられます。
職業にも関係性はありますが、主に“生涯”および“役割”に紐付けている様相です。つまり、“ライフ・キャリア” の概念です。
「働くこと」を使っているのは“雇用されて働く労働”のみならず、地域社会での活動、ボランティア支援、趣味活動など生活の中である目的、価値観によって実行することも含まれていると理解しています。
つまり、職業人としてのキャリアのみならず、自らが置かれた環境に応じた役割に必要なキャリアを指しているのではないでしょうか。
「キャリア」概念を、生活費や老後の蓄えのための“職業”を中心として考えるのか、社会の中の自分自身の“役割・使命”を中心として考えるのか、自己満足のための生活を中心として考えるのか、で生きる目的や行動する方向性などは大きく変わってきます。
同報告書には、『「キャリア」の解釈・意味付けは,極めて多様であり,また,時代の変遷とともに変化してきている』 とも記述されており、それを前提として私も「キャリア」について考えている一人です。
キャリアの由来
「キャリア」の語源は,中世ラテン語の「車道」を起源とし,英語で,競馬場や競技場のコースやトラック(行路,足跡)を意味するものであった。そこから,人がたどる行路やその足跡,経歴,遍歴なども意味するようになった。
文部科学省HP/中学校キャリア教育の手引きより
私が連想したのは、世界遺産であるピコ島(ポルトガル)に残る二本の線。今もなお岩肌に荷車の轍が残っている光景です。
(下の出所はTBS「世界遺産」2019.11.24放送アーカイブより)
人間の長年の活動によるもの。引いたのか押したのかは不明ですが、この荷車の車輪による痕跡は、道なき困難な場所でも繰り返すことで道を造り出すことができることの証明を、明らかにしているように感じました。
まさしく、人が経験によって創り出す痕跡が『キャリア』と言えます。
「キャリア」は自ら考えること
- 仕事や職務で必要となる「キャリア」
- 地域社会と関わるための「キャリア」
- 伝統やイベントに関わる「キャリア」
- 家族との関係を良好にする「キャリア」
- 友人・恋人との関係を良好にする「キャリア」
- 子育てに関する「キャリア」
- 趣味や特技に関する「キャリア」
- 料理や掃除に関する「キャリア」
- 政治や経済に関わる「キャリア」
- お金に関わる「キャリア」
- 睡眠に関わる「キャリア」
- メンタル、健康に関する「キャリア」
……など、生きていく上での「キャリア」は数多くあります。
人生・生き方、仕事、役割、環境などに適したキャリア、さらに目的・使命を果たす自己実現のために必要なキャリアを身に付け、バランスよくマネジメントしていくことになります。
いわゆる「キャリア・マネジメント」です。