人間関係の強化3要素「RAC」
RAC
今回おススメしている「RAC」について考えていきます。
この「RAC」は、人間関係(社交)性を強化する3つの要素です。
初期的な基本姿勢、身嗜み、口臭・体臭、声のトーン、笑顔、言葉使いなどを良い状態にしてあることが前提となります。
Table of Contents
RAC(ラック)
「RAC」は、
- Reality(リアリティ=同意・承認)
- Affinity(アフィニティ=親密性・親近感)
- Communication(コミュニケーション=意思疎通)
「リアリティ(Reality)」は真実・同意・認知の意。
人間関係における相手の思考・想い・理想と、現実性の一致を図ることになります。
つまり、“信頼性の濃さ” と言えます。
相手からの『あなたを信じてもイイの?』という問いかけに対して、具体的かつ現実的な応えを与えることになります。
相手の持つ不安・不信の解消という大切な要素です。
「アフィニティ(Affinity)」は、親近感・親密さ・相性の意。
人間関係における自分自身と相手との心理的な距離感です。
自分自身の相手への親近感もありますが、相手からの自分自身に対する親近感が重要になってきます。
人間関係(社交)性を良くしたい場合は、このアフィニティ(心理的距離感)を適切にすることがポイントになってきます。
時には『相手の懐に入る』ことも必要な場面もあるでしょう。ただし、距離 “間” を強制的に縮めるのではなく、相手の同意を得ながら実行していくことになります。
「コミュニケーション(Communication)」は意思疎通。
対話を通じて互いに理解し合い、共感・納得・コンセンサス(合意)・共有することとなります。
同じ言葉を使い、同じリズムで、訊くこと(問い)&聴くこと(傾聴)、伝えること(伝達)、理解すること(翻訳)などを実行していきます。
コミニュケーション
「コミニュケーション」は人間関係を作るにあたって重要なことであることは誰しも理解できていると思います。
では「コミニュケーションとは何か?」という問いに対する答えが複数あるでしょう。
例えば、AさんとBさんの答えが一致せず、相手の主張を受け入れない時、AさんとBさんのコミニュケーションは成立するでしょうか?
『あなたの考え方はわかったわ。私とは合わないようね。それじゃあ!』となれば、コミニュケーションができる関係ではなくなります。
コミニュケーションは会話すること、話し合うこと自体ではなく、目的を果たすための手段です。
理解し合う、共有する、合意する、意思疎通する、ための行為になります。
例えば、『目標に向かって協力し合って頑張ろう!』と複数人のチームが活動始めたとしても、『目標』とは何か?『協力』とは何か?『頑張る』とは何か?がチームメイトそれぞれで違うと、日に連れてズレが生じます。(ズレは仕方ないため調整すれば良いのですが)『もっと協力しろよ!』『協力してるよ!』、『もう少し頑張れよ!』『俺なりに頑張ってるよ!』…という気持ちのズレによってチームがバラバラになることは大いにしてあることです。
コミニュケーションの難しさは、人それぞれの考え方、想い、能力などが違うからではないでしょうか。
だからこそコミニュケーションが重要なのです。
リアリティ
「リアリティ」は、思っていること(イメージ)や信じていること(ビリーブ)と、実際に見えていることなどの事実(実態)が一致している状態を表します。
例えば、『あのお店のハンバーグはジューシーで美味しい!』と知人から聞いたので、味をイメージしながら食べてみたら、『噂通りにジューシーで美味しい!』となった。
聞いていたこと、イメージしていたことと、事実が合致したことで “リアリティが増す” 感覚を得たわけです。
『信じて良かった!』『思い描いていた通りだわ!』『聞いてたことと一緒!』という感覚(感情)を持つことで、信頼性が高まっていく関係性がポイントです。
『信じて損した!』『イメージと違う!』『聞いていたこととは違う』のような感覚(感情)を持たれた時点で、信頼性は失われていきます。
“私” が相手に伝えていることが、どんなに素晴らしく、どんなに夢のあることだったとしても、現実(実態)と乖離があれば、伝えたことに対する疑念とともに、言った “私” に対する信頼度も下がることで、関係性は(良くはならず)悪くなります。
表向き(外づら)は良くても、裏(内面)で悪いことしていれば、アフィニティとコミュニケーションが順調だとしても、水の泡と化すこともあります。
政治家と国民との関係性、企業と消費者との関係性、上司と部下との関係性、先生と生徒との関係性、女と男の関係性、親と子の関係性など、社会で生きていく上で多くの関係作りを体験する中で、『何を信じていいのか?』という問への答えは、“私” だけでなく相手にとっても長年の課題です。
信頼度を高めるためには、当たり前のことですが、
- 嘘がない
- 矛盾がない
- 言行一致
- 名実一体
などがポイントになるでしょう。
アフィニティ
「アフィニティ」は心理的な距離感に該当します。
例えば、『遠くてもいつもあなたのことを想っているよ!』『いつも君がそばにいるように感じている』というのは心理的距離感が近い状態。
『あなたを見ているだけでイライラする!』『(極端な言い方をすると)あなたと同じ空気を吸っていると思うと嫌になる』というのは、心理的距離感が遠い状態です。
つまり、“私” は、相手からどれほどの距離感の存在でなければならないのか、考えて接することになります。
効果的なアフィニティとは、常に提供することです。
「ギブアンドテイクGive&Take」ではなく、「ギブアンドギブGive&Give」の意識が必要になります。つまり、見返りを求めないということ。(これだけ尽くしたのに……)という気持ちが生じるのは、見返りを求めていたことになります。
「私にくれた人は良い人、私にくれなかった人は悪い人」という価値観があると、良い関係性は保てません。条件付きのアフィニティでは、良い人間関係は続かないのです。
また、アフィニティを受けたい、と願う人は他人からもらうことに重点を置きます。つまり、依存しているようなものです。
依存するのではなく主体的に、自身からコントロールすように活動することが大切です。
必要な場合は、積極的に “相手の懐に入る” ことが必要になります。
それは、相手に対する関心がなければなりません。
どのような人なのか、どのようなことを考えているのか、どのような悩みがあるのか、何をすれば喜ぶのか……など、関心を持たなければ知ることもありません。知らなければ、互いの距離感を縮めることはできないわけです。
相手の反応を見ながら調整することになりますが、自身の思い込みだけで調整するのではなく、会話などを通して意思の確認をし、明確にしていくことで調整していくことです。
距離感を縮めることができないと、効果的なコミュニケーションを取ることさえも困難になってきます。
愛の三角理論とRAC
心理学者ロバート・スタンバーグ(Robert Sternberg)による「愛の三角理論(Triangular theory of love)」というものがあります。
“愛情” は次の3つの要素(コンポーネント)で構成されている、という理論です。
その3つの要素とは
1)親密性(Intimacy)
絆、つながり、愛(いと)おしいさ、好意、親しみさ、和らぎ(安心感)など、リレーションシップ(関係性)の近さに関わる情緒的・感情的要素
2)情熱(Passion)
3つの方法(強い熱意や興奮の感覚、相手を行動させる怒りなどの感情、強い性的・ロマンティックな感情)により、心的・身体的な刺激を求める動機的要素
3)コミットメント(Commitment)
3つの方法(与える、忠実、献身的サポート)を約束し、相手の満足度を高め、関係を維持しようとする意志・責任、認知的要素
さらに、3要素のバランスは期間が長くなるにつれて変化し、愛のカタチも変わります。「愛の三角理論」では、平均的な変化の傾向は以下の通りです。
1) 親密性
付き合う期間が長くなるにつれ、徐々に強くなり、その後、一定になる。
2) 情熱
付き合い始めに急激に盛りあがり、しばらくすると弱まる。
3) コミットメント
付き合う期間が長くなるにつれ、スピードを上げて強くなり、徐々に一定になる。
この3要素の強弱(バランス)によって、様々な愛情のタイプ(=愛のカタチ)に分類されています。
愛情の8タイプ
- 完全愛
3つ全ての要素のバランスがよく、理想的な「愛」のカタチ - 好意、友情
親密性のみ。情熱とコミットメントは無い。
「好意」を持っている関係。 - リーマレンス、夢中
情熱のみ。親密性とコミットメントが無い。
夢中だが深刻さはない。親密性が発展しないと突然消えることも。
情熱的な愛により、神経伝達物質フェネチルアミンが増加し向精神作用が起こる。 - 虚愛、空愛
コミットメントのみ。情熱も親密性も無い。
関係だけがむなしく続く関係。「冷たい愛」とも言われる。時間経過で他に転じることも。 - 情愛、ロマンティック
親密性と情熱は強く、コミットメントが弱い。
当初は心身共に情熱的だが、長続きしない傾向。 - 友愛、思いやり
親密性とコミットメントは強く、情熱が弱い。
友情の延長で恋愛になったケースで、「親友関係」に近い。
「伴侶の愛」とも言われ、互いに理解し、気遣う関係性が生じる。 - 激しい愛、一目惚れ
情熱とコミットメントは強く、親密性が弱い。
いわゆる「身体だけで繋がっている」のような関係。 - 非愛型
3つ全てが弱い、または無い関係。
8つのカタチについては個々人で想像してもらうとして、スタンバーグの「愛の三角理論」と今回の「RAC」は、要素(コンポーネント)の観点から共有すべき点があります。
- Reality(リアリティ=同意・承認)
- Affinity(アフィニティ=親密性・親近感)
- Communication(コミュニケーション=意思疎通)
「リアリティ」の増強、つまり信頼性を高めるためには、親密性(好意)・コミットメント(与える行為)は欠かせません。友愛や思いやりのある継続的な行為によって、リアリティを増していきます。
「アフィニティ」の強化、つまり親密性を高めるためには、コミットメント(積極的なサポート)・情熱(相手に関心を持つ、相手の懐に入る行動)が必要になってきます。ただ、情熱があり過ぎて相手がひいてしまうことがないように、反応を見定めながら行なっていきます。
「コミュニケーション」の強化、つまり共感性・コンセサンスを得るためには、親密性・コミットメント・情熱が必要になります。コミュニケーションのポイントは双方向であること。一方的では意味をなしません。伝えても伝わらず、与えても受けてもらえない状況では、疲れるだけです。
長期決戦となる人間関係性のバランスを保つためには、セルフ・メンタル強化が大切になってきます。
相手との距離感を認識
社交性の距離感で有名な概念が、「プロクセミックス(近接学)」です。一般的には「パーソナルスペース」とも呼ばれています。
文化人類学者のエドワード・T・ホールが提唱したもので、人は他人に対しての距離感をおおよそ四つ(実質は八つ。遠方相と近接相に分類)に使い分けている傾向がある、というもの。
日本人のパーソナルスペース(約7年間にわたり男女約900名を対象)を調査した佐藤綾子女史のデータは以下の通り。
日本人は欧米人と比較して、密接距離感は遠く、公共距離感は近いという研究結果があります。
この差の要因は主に、生まれ育った居住空間、あるいは人種数(民族性)による警戒心などの度合いで、多民族や移民などの多い地域と単民族の地域の環境によると思われます。
密接距離感が遠いのは、ハグや家族でのキスなどの慣習がない日本人は “恥ずかしい” という気持ちが強いため、と言われています。
今回の「アフィニティ」を自分自身が理解する上で、プロクセミックスの(平均的な)距離 “間” を意識するのではなく、自身にとっての心理的な距離 “感” はどうなのか、考えてみることが必要になります。
人間関係の良い人、悪い人の実質的な距離感ではいかがでしょうか?
人間関係の苦手な人は、全体的に距離感が遠い傾向であることは予想できるでしょう。それだけでなく、向いている方向(目線や意識)がズレていることもあります。
仲の良い人との距離感は近く、方向もいいはずです。そんな仲の良い人に対してでも人間関係の苦手な人は、会話中に徐々に距離感が離れていき、方向もズレてくるのがわかります。それを感じ取った相手も、次第に離れていく(距離感を離して様子見する)傾向があります。この繰り返しにより、人間関係の苦手な人は、苦手のままになってしまうわけです。
人脈作りにおいて、このRACのバランスが重要になってくるということ、そのためにも人格を磨き、経験を積み上げていくことになります。