キャリア・マネジメントとは?概念とタイプの分析
「キャリア・マネジメント」とは、『将来のキャリア目標を定めて、その達成に向けて計画的に行動していくこと』・・・というのが一般的な定義または解釈です。
この定義を客観視すると、“誰(Who)が” が曖昧です。定義付けするのは会社組織なのか? 個人なのか?
それに、「キャリア」という “未知” のものを目標として定めることはできるのか? “既知” の目標とするためにどのようにすれば良いのか?
立場によって「キャリア・マネジメント」は違いますから、ここでは視点を変えながら考えていきましょう。
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キャリア・マネジメントとは?
「キャリア・マネジメント」とは、将来のキャリア目標を定めて、その達成に向けて計画的に行動していくこと、と表現されている定義からあまり外れることなく、個人がもう少しイメージしやすいように、ここでは検討していきます。
まず「キャリア」とは職業に関する経験値、知識、スキルなどだけに留まらず、また他人が定義付けするのではなく、自身(個人)が見出す「生き方」「生き様」に直結する自分模様を描くための “目的実現可能な全人的能力の総称” と捉えています。
そして「マネジメント」とは “(今)より良くする” ことです。昨日より今日(今日より明日)、先月より今月(今月より来月)、昨年より今年(今年より来年)を良くするために考え行動していく(行動させる)ことです。
つまり、将来どのような生き方をしているのか(目標)を明確化し、今(現在)から目標までの歩み方を計画して、日々、より良い状態にするように行動していくことがキャリア・マネジメントと言えるかもしれません。
わかりやすい例えとして、
24歳の営業社員が、『40歳で営業部長になる』という目標を掲げて、そのために計画し、行動することがキャリア・マネジメントになるのか、あるいは『会社と自社商品を愛し、上司や同僚、部下を信頼し、信頼される若手営業部長になる』という目標を掲げて計画し行動することがそれになるのか、どちらのほうがイメージしやすいでしょうか!?
キャリア・マネジメントとキャリアデザインの違い
「キャリア・マネジメント」というワードは、「キャリア・デザイン」よりもそれほど一般的には浸透していないと言えます。また、「キャリア・デザイン」との境界線も明瞭でないまま使用されているのも現実です。
ただワード自体が重要ではなく、具体的に何を行うか、がここでのポイントになります。
と言っても折角なので、簡単に使い分けてみましょう。
「キャリア・デザイン」は「キャリア・マネジメント」の一環(プロセス)である、という解釈が主流です。
ビル建設で例えるなら、「キャリア・デザイン」は設計者(=限られた要件で完成イメージを可視化する立場)の役割、「キャリア・マネジメント」は施工管理者(=納期までに完成させる立場)の役割でしょうか。
設計者と施工管理者の双方が協力し合いながら完成させるわけですが、どちらかが不適切だと不完全なものとなり、危険を伴います。施工管理者は、プロセス、品質、安全、予算、納期など完成に至るまでの全てを管理しますし、設計者は設計通りに施工されているのか監理する役割と、場合により設計変更を行なうことになっています。
設計する役割と施工管理の役割が同一人物(自分自身)である限り、「キャリア・デザイン」と「キャリア・マネジメント」は一元化している必要性があり、全体的プロセスの観点で「キャリア・デザイン」は「キャリア・マネジメント」の一環と言えます。
その関係性を表現するのにヒントになるのが、「as is(アズイズ)」と「to be(トゥービー)」の活用です。
As is から To be へ
「as is」は現状・現実、「to be」は理想・あるべき姿を意味します。
理想とは非現実的なことではなく、具体的な目標やビジョンなどを達成した時の状況・状態です。この「to be」になるところを「キャリア・ビジョン」と呼びます。
「as is」から「to be」に向かう過程の具体的な計画を可視化および具現化することが「キャリア・デザイン」となります。
それを踏まえて「to be」へ確実にたどり着くための計画的活動や戦術的手法、状況に応じた修正・調整などが「キャリア・マネジメント」です。
日々前進していく上で「to be」は基本的に変わらないのですが、「as is」は活動中途で変動していくはずです。階段を登っていれば、より高い段差のところにいますから、現状把握を常に行い、正しく登っているのか、「to be」へ向かっているのか、たどり着くために不足しているものはないか、などを理解し、修正・変更も前提に選択や決断を行なっていきます。
「マネジメント」とは、『(今)より良くする』ことです。
組織内では監督・監視・管理するという昔ながらの意味合いが強いですが、『現状を把握し、理想の状態に近づける』という意味づけが正確です。
それでは、さらに分析してみましょう。
キャリア・マネジメントの現実
現在の「キャリア・マネジメント」は会社組織で実施されていることが多いようですが、最終的には個人が自身に対して行なうものと捉えています。
組織視点と自分視点で分類してみました。
組織視点のキャリア・マネジメント
組織側視点は組織が主体であるため、個人に対しては客観的な体制になります。
人材開発(人材育成、キャリアパス、キャリア開発など)や人材活用(人事異動・配置転換・昇格など)を中長期的に体系化・継続化すること。
つまり、組織内の個々人のキャリアをどのように活かし、いかに育成していくのか、組織の利得と個人の利得の調和を図り、組織の目的や長期的目標に沿ってマネジメントしていくことになります。
働き方の多様化やグローバル化が進み、従業員の離職率の上昇や、人材のミスマッチといった問題を抱える企業が増えており、各組織の悩ましい現実があるようです。
昨今の傾向を大まかに分析すると、3つのタイプに分類されている気がします。
(1)組織内でのキャリア・マネジメント
従来の組織内で人材開発・人材育成を主としているマネジメントです。
勤続年数による人材育成プラン、管理職・ミドルシアのための育成プラン、昇格(キャリアパス)のための育成プラン、労働者のキャリアレベルをアップさせるための人材開発施策など、組織内で画一化・統一化された計画に基づき “運用” されています。
そのため、組織が個人に合わせているように見えて、個人が組織に合わせている感が強いのは、組織と個人のキャリアに対する意識にギャップがあるからだと考えられます。
(2)組織外を活用するキャリア・マネジメント
兼業・副業などを就業規則上承認することで、組織外での経験・知見を増やし、より俯瞰的、広角的な視点をもたせようとする動きです。
出向や移籍も業務命令としてではなく、労働者が能動的に要望できる仕組みにより、選択肢を増やした環境でのキャリア・マネジメントを行なっています。
ただ、前提である「キャリア・デザイン」が確立していないため、組織と労働者との意識のギャップがあるのは少なくありません。労働者は収入の増を目的にしていたり、気分転換のつもりであったり、趣味や特技の活用だったり、転職先の探索であったりしているかもしれません。
キャリア・マネジメントを組織主導で考えていると失敗するような気もします。兼業・副業の経験値が組織で活かされているのか疑問が残るのは、私だけではないようです。
(3)オープン的なキャリア・マネジメント
“オープン”というワードが適切かどうかは不明ですが、組織内で育成した労働者の意志を踏まえ、独立、留学、リカレントなどのサポートを有効的に行ない、その個人とのアライアンス、再入社などの仕組みにより組織と業界の改革と強化を図っています。
この施策が受け入れられた場合、意識の高い新たな人材が集まる相乗が生じていくと考えられます。労働者が主体的かつ能動的にキャリア・デザインを行っていくことができれば、オープン的組織の支援は労働者にとって心強いものとなり、知見・見識を向上させた労働者やフリーランスが増えることで、組織も拡大していく可能性は高くなります。
ただ、組織の支援には当然限界があり、社内審査や支援に関する契約上(同意上)の厳しさはあるでしょう。さらに、そのような支援が、個人の精神的な負担となり、かえってキャリア開発のモチベーションを低下させる可能性も考えられます。業界や支援策などを見極めていく必要がありそうです。
自分視点のキャリア・マネジメント
自分視点は自身が主体であり、主観的なキャリア構築志向となります。
組織内外問わず、職業や人生の目的、個人の長期的目標、個人のビジョン達成のために、自分のキャリア(職業スキルではなく、ライフスキル的な人生キャリア)構築と実践をマネジメントしていくことになります。
つまり、自身が何者なのかを見つめ(自己理解)、どこへ向かうのかを定め(キャリア・ビジョン)、前進する中で、キャリアの何を、いつ、どこで、どのように‥‥(職業理解、キャリア・プランニングなど)を、適宜かつ適当(=いい塩梅という意味)に引き出し、または新たに取り入れていき、目的地点の到達までを遂行する、ということになります。
お堅い表現をすれば、自己分析と目的・理念・ビジョンなどを明確にするなどの自身に対するリーダーシップ(セルフ・リーダーシップ)を発揮し、What-When-Where-How・・・などの戦術を模索、さらにInput と throughputとOutputのプロセスの反復活動を自発的に実践・管理(セルフ・マネジメント)し、目的遂行を図ること、これが個人の「キャリア・マネジメント」プロセスです。
大切なことは、組織とは違い決断・選択・思考・行動について自身の思いのままにでき、結果に対する責任の受け止め方も自由であること。つまり、全責任は自分自身にあるというわけです。そうであれば、そのプロセスを楽しむ方が良いと思われます。
最近の「キャリア・デザイン」モデルのタイプを大きく(無理やり)分類すると、3つになりました。
(1)安定ワーク(一社主義)のタイプ
一般的に割合の多いタイプです。
終身雇用制度の崩壊と言われている時代になりましたが、年齢層関係なく今の会社組織でキャリア・デザインを行なっています。昇格・昇給、あるいは専門職での技術練魔、事業所拡大や新規事業などの見える成果などを目標として実践していく傾向です。
組織内のキャリアパスなどを活用して進めて行きやすい反面、組織に依存または影響を受ける部分も多く、キャリア・デザインが薄っぺらいものになる可能性もあります。
日本でのいくつかのデータでは、一社主義者が約3〜4割いるとされています。食べていく(生活の)ために働いているライスワーク的思考の持ち主、定年までとにかく続けたい安定型思考の方々などは、同じ組織内で生きていくために努力します。
組織や社会に依存的なキャリア・デザインは時に、大きく修正が必要になる可能性もあると言えるかもしれません。
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(2)ワーク・ライフバランスのタイプ
一般的なイメージは『仕事と生活の分別』です。“バランス(調和)” というワードの捉え方が様々なためですが、本来は “相乗効果、好循環” を意図としています。
職業と生活の関係性を個人の特性に基づいて明確にし、主体的にキャリア・デザインを行おうと努めているタイプです。
“努めて” と感じているのは、自身の思い通りにいかない傾向が見受けられるからです。会社・職業を選ぶ際に、残業がない(または少ない)、通勤距離が近い、体力的・精神的にラクそう、経験のある仕事、人間関係が良さそう、などから選んでいることが多いでしょう。キャリア・ビジョンが明確になっていないかもしれません。
順調にワーク・ライフバランス的なキャリア・デザインを実践している方もいます。資格取得のための勉強&取得、得意分野のさらなる錬磨のための修行、苦手なことの克服や関心事のための習学、人脈作りのためのコミュニティ参加、信念や価値観に準じてのボランティア活動、など多方面に活動範囲を広めています。
働き過ぎる日本人、幸福度の低い日本のあり方に対し、欧米ライフスタイルを参考にアピールしていますが、個人単位では限界があり、社会や会社組織に依存的になってしまうことは、致し方ないかもしれません。ワークシェアリングなどの運営体系が全体的に進めば良いのですが・・・。
(3)ワーク・イン・ライフ(ワーク・アズ・ライフ)
こちらは仕事と生活の “調和” というより “融合” です。『仕事も生活の一つ』という考え方です。
1日あるいは人生における仕事の時間的割合は高いわけですから、『仕事を楽しむ』『好きな(好きに)仕事をする』という意図があります。食べることも寝ることも遊ぶことも、仕事の質や集中力に連動している感があり、生活そのものの一体感を踏まえてキャリア・デザインを実践していきます。
このスタイルを実践・構築するための相当な努力が必要のため少数派と思われますが、一つのタイプとして徐々に浸透しています。
ただ、リスクの高いスタイルとも言えるため、キャリア・デザインの精度と、セルフ・マネジメント能力の高さは必要不可欠と考えます。
当サイトでは、自分視点の「キャリア・マネジメント」を主要として参考になる(かも!?)事項をまとめていきます。